「隠れた小さな宝石」と呼ばれたまちで。出雲市職員が見つけたインバウンドの仕事の面白さ

出雲市役所

2026/09/17

「住んでいると、知ってるつもりで、実は知らなかったことがたくさんあった」

そう語るのは、出雲市役所観光交流部インバウンド推進課で働く、入庁12年目(平成26年度採用)の柳楽翔太さん。総務課、人事課、健康増進課を経て、現在はインバウンド推進課で海外への情報発信や外国人観光客の受け入れ環境の整備に携わっている。

 

今回は、出雲市役所で働く面白さや、この仕事を通じて見えてきた出雲の魅力について、たっぷりとお話を伺った。

転勤をきっかけに気づいた、市役所という仕事の幅。医療機関の営業から出雲市役所へ

ー自己紹介をお願いします。

柳楽:生まれは出雲ではないのですが、小学校からずっと出雲市の多伎町で過ごしていました。大学卒業後は3年間ほど医療関係の民間企業に勤めていて、山口県や出雲市で、医療機関の支援の仕事をしていました。平成26年度から出雲市役所で働いています。

 

ーなぜ自治体、しかも出雲市役所を目指そうと思われたのですか?

柳楽:元々公務員になるつもりは全くなくて、市役所も住民票を出すところくらいのイメージでした。ただ、就職して働く中で、市立病院の職員さんと関わる機会があり、税金や住民票の対応だけでなく、過疎地域の医療や観光、産業にも携わっていると知ったのが、きっかけの一つです。地元に帰る予定はもともと考えていなかったのですが、転勤で出雲に帰ってきたこともあり、地元で働くのもいいなと考えるようになりました。

 

ー他の自治体は受けなかったのですか?

柳楽:出雲市以外は受けていません。前職での転勤をきっかけに出雲に戻ってきたのですが、せっかくならこのまま地元で頑張りたいと思い、出雲市役所に絞って受験し、採用していただきました。

 

総務・人事・健康増進、そして今はインバウンド推進課。異動を重ねて見えてきたもの

ー入庁されてから、これまでどのような部署を経験されてきましたか?

柳楽:入庁直後は総務課に配属になり、市の公文書管理や、選挙にも関わる業務をしていました。その後、人事課で採用や給与の担当を経験し、大学に出向いて採用セミナーに参加したり、採用パンフレットを新しく作ったりもしました。3つ目の部署が健康増進課で、新型コロナウイルスの感染症対策や、子ども・高齢者の予防接種に関わる事業に取り組んでいました。

 そして4部署目となる今、2年目を迎えているのが、観光交流部インバウンド推進課です。

 

ーご自身で異動の希望を出されることはあったのですか?

 柳楽:インバウンドや国際交流に関する部局に関心があったため、配属の希望は出していました。部署や職員の数も多いため、希望が叶うとは思っていませんでしたが、運良く配置していただけました。市役所への入庁時には、インバウンドという仕事自体を目指していたわけではないのですが、私自身、旅行がすごく好きで、自分の趣味や関心のある分野で仕事ができたらいいなという思いがありました。

 

ー現在のお仕事について、具体的に教えてください。

柳楽:大きな役割は、海外に向けた出雲の情報発信と、外国人観光客の受け入れ環境の整備です。フランス人の国際交流員が在籍しているので、英語やフランス語を使ったSNSでの発信や、外国向けWebサイトの活用をしています。

 

もう一つが、海外の旅行会社やメディアに向けたプロモーションです。台湾やフランスなど海外の旅行会社やメディアに向けて、出雲の観光スポットや宿泊施設を組み込んだモデルコースの紹介をしています。

海外の旅行会社との商談会に参加することもあります。職員が5人いて、手分けして業務にあたっています。

国際交流員と協力して事業を展開しています
台湾商談会に参加した際の様子

「隠れた小さな宝石」と呼ばれたまち。知らなかった出雲の魅力との出会い

ー出雲を訪れる海外の方には、どんなところが人気なのでしょうか?

柳楽:島根県自体、まだまだインバウンドの人数は全国でも少ない方で、あまり知られていないエリアです。初めて日本に来られる方は、東京や京都、大阪といったゴールデンルートに行かれることが多く、出雲まで来られる方は、リピーターの方や、他の人が行ったことのないエリアに行きたいという方が多い印象です。

やはり、出雲大社の人気は高いですが、その他のエリアでは、日御碕のダイナミックな自然景観や海鮮丼も評価が高いです。国立公園やジオパークにも認定されている広大な自然があって、ドライブコースとしても人気があります。それから、平田地域にある木綿街道も、海外の方に喜んでいただいています。かつて木綿の集積地だったエリアで、醤油屋さんや酒蔵が残る小さな町並みなのですが、旅行会社を招いた視察ツアーでは、散策や買い物で予定時間をオーバーすることも多々あります。

ーこの仕事を始めて、改めて気づいた出雲の魅力はありますか?

柳楽:出雲には長年住んでいましたが、これまでは「出雲大社がすごい」、「日御碕灯台が美しい」程度の認識でしかありませんでした。観光の部門に来てからは、まだまだ勉強中ですが、神話の始まりの地としての出雲の魅力を改めて知ることができました。恥ずかしながら、それぞれの神社や施設を単体では知っていても、神話のストーリーとしては認識できていませんでした。

また、業務で市内の各地を周り、歴史や背景を学ぶ中で、特に印象的だったのが日御碕神社です。「日本の昼を守る」伊勢神宮に対して、日御碕神社は「日本の夜を守る」とされ、古来より出雲は日が沈む聖地として認識されてきました。日御碕神社を含む日御碕周辺のエリアは、「日が沈む聖地 出雲」として、日本遺産にも登録されています。近くに住む方や関心のある方には当たり前のことかもしれませんが、私は日御碕から少し離れたエリアで育ったので、こんなに面白いストーリーが身近にあったのか、と刺激になりました。

個人的には鷺浦の街並みも歴史的な背景とセットで知ると面白く、おすすめしたいスポットです。

重要文化財に指定される「日御碕神社」の楼門

 

また、海外の旅行会社を視察でご案内した際、担当者の方から「ここは日本の隠れた小さな宝石のような場所だ」と言っていただいて、とても嬉しかったのを覚えています。

実際にその方はすぐに動いていただき、出雲大社以外のスポットもしっかり巡っていただけるようになったんです。反応をいただいた方が実際に動いてくださって、形になっていくのを見られたのは、とても嬉しい出来事でした。

海外旅行会社による日御碕神社視察の様子

数字に表れにくい難しさと、チームで前を向く日々。出雲市を目指す方へ

ーこの仕事をしていて、難しいと感じる部分はありますか?

柳楽:海外の方が相手なので、台湾のように距離が近い国だと成果が見えやすいのですが、フランスなどヨーロッパになると、取り組みの効果がすぐには数字として見えてきません。

旅行の計画を立てていただいてから実際に来ていただくまでには時間がかかるので、長い目で取り組む必要があると感じています。インバウンド推進課自体は小さな課なので、視察対応や取材があれば縦割りを意識せずほぼ全員で取り組みますし、市の観光課や出雲観光協会とも協力体制を取っています。

 

ー民間企業と自治体、両方を経験されて感じる違いはありますか?

柳楽:仕事の進め方(自由度)や意思形成のプロセスは大きく違うと感じました。民間企業の経験はわずか数年ですが、現場での判断など担当者の裁量による部分が大きかったと思います。自治体では、法律や自治体の条例に基づいて業務を行うため、関係する法令の確認や関係機関や内部での協議を重ねて事業を進めます。

民間と比べるとスピード感は劣りますが、行政にしかできない分野も多いため、各事業者との連携をする際には、実際に現場で取り組まれている方の話をしっかり聞きながら、次の対応に活かすようにしています。

 

ー働く環境について、休みの取り方や職場の雰囲気を教えてください。

柳楽:今は仕事が忙しく、残業もありますが、休みの日はしっかり休むようにしています。旅行が好きなので、ここを休むと決めたら飛行機のチケットを取って仕事を調整します。それが仕事のモチベーションにも繋がっています。休暇も、年間で十数日は取れていると思います。

職場の雰囲気については、海外の方を相手にする仕事のため、とても刺激的です。今は自動翻訳のアプリ等も発達していますが、雑談も含め、日頃のコミュニケーションは大切にしています。仕事が大変でも人間関係が良ければ、助け合いながら仕事を進めることができると思っているので、そこは意識しています。これまでに経験した部署も、それぞれのカラーはありますが、コミュニケーションを大切にする雰囲気は共通していたように感じます。

 

ー出雲市役所で働く魅力を挙げるとしたら、どんなところですか?

柳楽:一番は、地元の魅力に、仕事を通じて改めて気づけることだと思います。出雲市は2市5町の市町村合併を経ているため、エリアが広く、その土地の近くにいる人しか知らないことも多いので、仕事で関わった方から面白い話を聞けるのも楽しみの一つです。

以前、人事課で採用担当をしていたときは、幅広い部署の職員と関わる機会が多く、それぞれの現場で頑張る姿を見るのは刺激になりました。採用前に会ったときは大学生・高校生だった職員が、それぞれの現場で活躍している姿を見ると、とても嬉しく思います。

 

ー最後に、出雲市役所を目指す方へメッセージをお願いします。

柳楽:インバウンドの仕事をしていると、海外からの視点が入ることで、地元の人自身が自分たちの良さに改めて気づくことがあります。地域の方と協力しながら、良い形で出雲に来ていただけるように取り組んでいきたいと思っています。出雲に住んでいると、「出雲って何もない」という方もいますが、出雲に住む人も気づいていない魅力が、まだまだたくさんあるまちです。そうした発見を楽しみながら働ける仕事だと思うので、興味を持っていただけたら嬉しいです。

 

ー本日はありがとうございました。

 

取材を通じて印象に残ったのは、柳楽さんが繰り返し語っていた「住んでいるからこそ気づけていなかった魅力」という言葉だった。出雲神話のつながりや日御碕神社が担ってきた役割など、地元で育った柳楽さんでさえ知らなかったという出雲の奥深さは、この記事を読む方にとっても新しい発見になるかもしれません。

 

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年8月取材)

出雲市縁結びのまち行政職職員インタビュー観光インバウンド

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 「神在月」、「日が沈む聖地」など、古の時代から、出雲は、特別な聖地として人々の心に深く刻まれてきました。 「出雲神話」から続く長い歴史において、生活様式が変化する中にあっても、出雲の豊かな自然、伝統文化、人の温かさは、変わらず現代に生きる私たちに受け継がれています。  出雲が大好き!仕事を通じて地元に恩返ししたい!という方、ぜひ一緒に出雲の持つ力『出雲力』を高め、ふるさと出雲を盛り上げましょう。

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