「この人しか知らない仕事」がない組織。民間営業から加古川市役所へ、転職2年目で3か月の育休に
加古川市役所
「安定を選んだねと言われるのですが、それだけじゃないと思っていて」
そう語るのは、加古川市役所の国民健康保険課給付係で働く入庁して2年目の森崎さん。
20代は営業一本。「とにかく自分が強くなりたい」という軸で選んだ環境から、30歳で加古川市役所へ転職しました。配属先は、担当業務が半年から1年ほどでローテーションしていく職場。その仕事はこの人しか知らない、ということが起きない体制のもとで、入庁2年目に合計3か月の育児休業を取得しています。
今回は、民間企業から公務員への転職を考えている方に向けて、住民サービス窓口の仕事や社会人経験職員を支える育成の仕組み、そして男性の育児休業について、たっぷりとお話を伺いました。
- 駅前のポスターに「市の業務は、市の推し活だ」。30歳で見えてきた、もう一つの選択肢
- 担当は半年でローテーション。「この人しか知らない仕事」をつくらない現場
- 予定日より早い、七夕の出産。15分で職場を出て、1か月の育休へ
- 伝え方より、聞き方。市のフロントに立つということ
駅前のポスターに「市の業務は、市の推し活だ」。30歳で見えてきた、もう一つの選択肢
ーまずは、加古川市役所に入られるまでのご経歴を教えてください。
森崎:大学生活は、何かになる可能性を模索しながら過ごしていた、という感覚ですね。1社目は、この業種で働きたいというのが特になかったので、とにかくきついところに行きたい、みんながへこたれるような会社に行きたいと思って選びました。ぬるま湯に浸かるとぬるくなる人間だと自覚していたので。周りの反対も押し切りました。2年間、営業が厳しいことで有名な実力主義の会社へ、2社目はその培ったものを広げたいという観点で人材・広告の会社へ。1社目で刀を研いで、2社目でそれを使って戦いに行くイメージでした。
ー30歳で市役所という選択肢が出てくるのは、大きな転換だったのではないでしょうか。
森崎:2社目でも満足して働いていました。ただ30歳のタイミングで、仕事だけしていていいのかなと。子育ても視野に入ってきた中で、広げたものをさらに大きくするのではなく、自分の大切な人とか地元に還元し、貢献したいと思うようになりました。
ーきっかけになったできごとはありますか。
森崎:明確に1つあります。加古川駅前をブラブラしていた時に、加古川市の職員採用ポスターが目に入り、「市の業務は、市の推し活だ」という、オタク風な格好をした職員が推し活をしているようなポスターで。それまでは市役所って堅いのかな、そもそも新卒で入るものだよなという勝手な感覚がありました。それが、これだけカジュアルに間口が広がっていて、自分が住んでいる地域を良くしたいというのが市の業務であるという言葉になっていて、すごくいいな、自分もその中に入りたいなと。そこが明確にきっかけです。
ーご出身は姫路と伺いました。住民として感じる加古川市の魅力は。
森崎:妻が加古川で勤務をしていて、私が大阪勤務だったので、お互いの通勤ができ、住みやすいまちということでマンションを買って、定住を決めていました。魅力は、まず大阪や神戸とのアクセスの良さです。地元にもすぐ帰れますし、社会人になってからできた友達とも会える。ちょうどいい場所だなと感じ、友達に移住を勧めるくらいです。あとは車で30分の距離にゴルフ場があるんです。都会と自然のこの距離感がすごく良くて。加古川の河川敷では河川空間を活用したまちづくり施策「かわまちづくり」の一環としてイベントも多く開催されていて、家庭を築くなら加古川市がいいなと。そういうことも踏まえ、公務員になると決めてからは、加古川市1本です。

担当は半年でローテーション。「この人しか知らない仕事」をつくらない現場
ー現在のお仕事について教えていただけますか。
森崎:国民健康保険課の給付係です。国民健康保険は、社会保険等に入っていない方や自営業の方が加入する、市町村が運営する公的な医療保険制度です。私は保険給付、つまり加入者に対してお金をお支払いする、葬祭費や出産育児一時金についての業務を担当しています。場所は市役所の1階、市民課の横なので、来庁される市民の方も多く、窓口で対応させていただくことも多いです。印象的だったのは、共通する業務はありつつも、係員それぞれが異なる担当業務を担っているというところ。担当がローテーションで回るので、その仕事はこの人しか知らないということが、逆にない環境です。それが休みの取りやすさにもつながっています。
ー半年ごとに新しいことを覚え直すのは、けっこう大変ではないですか。
森崎:私も最初は戸惑いましたが、皆さんが積み上げてくださっているマニュアルがありますし、皆がすごく丁寧に教えてくれるんです。びっくりするくらい丁寧に。皆さんもローテーションでやっているから、自分が分からなかったという経験がまだ新鮮な状態で引き継いでくださる。ここは引っかかるよね、というところも事前に教えてくれるので、そんなに大きな負担はなかったです。あと、加古川市役所独自の制度で、「エルダー制度」があり、新入職員一人ひとりに教育係の先輩がいるということも嬉しいポイントです。業務上の些細な疑問や、休暇の申請方法など、相談相手がいるということが私にとってものすごく助けになりました。
ー民間の営業とは勝手が違ったと思います。「いいギャップ」を感じたのはどんなところですか。
森崎:社会人になってから、学びに時間をあまり使わなかったように思います。それが、地方自治法の研修があったり、最近だと法令の読み方の研修があったりして、すごく充実しています。ちゃんと時間を取って勉強させていただくことで、人間として成長できている感覚があり、そして研修を通じて、いろいろな世代の方に混ぜていただくので縦のつながりもできます。最初は同期が少なくて、ほかの課に知り合いがいなくて困るということもありましたが、今はほとんどないです。
予定日より早い、七夕の出産。15分で職場を出て、1か月の育休へ
ー冒頭の「安定だけじゃない」の「安定」は、どんなときに感じられますか。
森崎:転居を伴うような異動が少ないというところは大きいです。異動といっても基本的には市内なので、単身赴任がない。前職までは、同期が東京になってしまった、家を建てたのに、という話がすごくあったので。生活の基盤を築けるのは大きいなと。あとは、日々の生活の中でどうしても休みを取らないといけない突発的なものってありますよね。休みが取りやすいのは、それができる環境にいるという心の安定にもつながります。
ー実際の働き方はいかがですか。奥様からのコメントもあれば。
森崎:通勤時間が短くなったので、家にいる時間も多くなりました。妻がつわりのときに働きながらでも、ご飯を作ったり掃除をしたりと家事に協力することができたので、助かっていると言ってもらえ、夫としての評価が少し上がりました(笑)。残業も自分でコントロールできます。今日は残る、今日は定時で帰る、とスケジュールを組める。営業として働いていた時は、どうしても顧客から急なボールが飛んでくるので、そこは大きな違いですね。

ーお子さんが生まれたのは入庁されたあとですよね。育児休業も取得されたと伺いました。
森崎:子どもは今2か月です。予定日は8月20日でしたが、七夕の日に生まれました。予定日よりだいぶ早くて、私もすごく慌てふためきました。7月7日の10時ごろに、あと2時間ほどで出産という状況になって。前職の営業職であれば、おそらく間に合わなかったと思いますが、話しやすい環境だったことから、出産が近いことを事前に相談できていたため、当日すぐに職場を出ることができ、余裕で間に合うことができました。制度だけではなく、周りの職員の理解がすごくある、いい職場だなと思いました。
ー転職して1年、2年だと育休を言い出しづらい、という話も聞きます。
森崎:そこは全くないですね。1日だけ引き継ぎ用の日を設けて、実質、出産後1~2日とかで育休を1か月取得し、妻が実家から自宅に戻ってくるタイミングでさらに2か月取得しました。係内でも男性で育休を取られた方が2人いらっしゃったので、どうやって取ったらいいですかという相談もできたんです。1時間単位の休暇も当日に相談したらすっと取らせていただけますし、制度を使いやすい体制があるのは大きいです。あとは、同期や中途で入った30歳くらいのメンバーとで、パパ飲みをするんです。抱っこひもの選び方やベビーカーのことなど、同じ目線で相談できる人がいるのも働きやすさかなと。

伝え方より、聞き方。市のフロントに立つということ
ー仕事のやりがいは、どんなときに感じられますか。
森崎:大きなエピソードはないんですけど、日々窓口業務をさせていただく上で、市のフロントに今自分が立っているんだなというところは、すごくやりがいに感じます。私の一つ一つの所作を見られていて、それが一定の市の評価となる。日々、やりがいと緊張感を持ちながら勤務させていただいています。
ー逆に、厳しいお言葉をいただくこともあるのではないでしょうか。
森崎:皆さん、何か分からないとか、何かをしたくて市役所へお越しいただいていて、それが叶えられないとなると、そういうお言葉をいただくこともあります。なので私はなるべくまず聞くようにして、ちゃんと聞いた上でお伝えするように心がけています。それでも厳しい言葉をいただくことはありますが、そうなったときに、一人にさせない体制が市役所にはあります。係長や課長が、すぐに窓口の近くに来て、周辺の椅子に座って様子を見てくれていたりするんです。何かあったときにすぐ入れるように。見てくださっている安心感があるので、新しく入庁する方も安心できるかなと思います。

ー法人向けの営業から市民の方と向き合う仕事になって、ギャップは。
森崎:伝え方よりも聞き方がすごく大事だな、というギャップはありました。法人向けだと、仮説を立て、先回りして、端的に利点や改善をお伝えする形でしたけど、市民の方はいろいろなお困りがあるので、大きい括りで分類できないんです。入庁したてのころは、知識を身に付けて、すぐに話したくなってしまうんですが、そうではなくて、聞いて聞いて聞いて、というスタンスが大事だなという気づきになりました。
ー最後に、応募を迷っている方へメッセージをお願いします。
森崎:職員は人が好きという方が多く、馴染みやすい空気だと思います。応募のハードルは「加古川が好き」「ちょっと良くしたい」という気持ちがあれば十分だと思います。私も本当に1年前までは、公務員になるとも思っていなかったですし、アンテナがなくて選択肢に入っていなかったんです。地元が好きで何か貢献したいという方はけっこう眠っていらっしゃると思うので、今回のインタビューが、そういった選択肢もあるんだなというきっかけに少しでもなったらうれしいです。学力試験だけでなく人柄を見るというところが加古川市の採用の特徴だと思いますので、ぜひ挑戦していただけたらうれしいです。
ー本日はありがとうございました。

20代を「とにかく自分が強くなりたい」と、あえてハードな環境に身を置いて走ってこられた森崎さん。その先で選んだのが、公務員という道でした。
ただ、お話を伺っていて感じたのは、それが「ぬるい場所」への移動ではないということです。
自分の一つ一つの所作が市の評価になる。そう言い切って窓口に立つ姿勢は、置かれた場所が変わっても揺らがない、森崎さんの仕事へのスタンスそのものでした。
そしてその道の先に、同じ目線で話せる仲間がいて、学ぶ時間があって、家族と過ごす時間がある。安定は、守りのための言葉ではなく、誰かのために動くための土台になる。駅前のポスターにあった「市の業務は、市の推し活だ」が体現されている環境なのだと、改めて感じた取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年9月取材)
この記事の官公庁・自治体
加古川市は、兵庫県南部の播磨灘に面し、播磨平野を貫流する県下最大の河川「加古川」の下流に位置する豊かな自然に囲まれた都市です。 古くから交通の要衝、物産の集散地として栄え、明治以降は商業地、肥料や繊維の生産地として、そして、現代は鉄鋼を中心とする工業のまちへ、さらには、全国有数の商業集積をもつ東播磨地区の中核都市として躍進を続けています。
加古川市役所をフォローして、「新着求人の通知」を受け取りましょう!
この記事が気に入ったらお気に入り登録しましょう!
