千葉県館山市役所の教育委員会スポーツ課の、川名さん、後藤さん、平野さんにお話をお聞きしました。
館山市の一大イベント「館山若潮マラソン」の運営というダイナミックな仕事の裏側を、赤裸々に語っていただきました。アクティブでやりがいに満ちた仕事のリアルに迫ります。
【目次】
- スポーツで地域を元気に!館山市スポーツ課の活動
- ランナー6,000人超が参加!一大イベント「若潮マラソン」の裏側
- 予測不能な事態の連続!テントが壊れ、会場は水浸しに?瞬時の判断が求められる、イベント運営の仕事
- 館山若潮マラソンの魅力
- ▼ 館山若潮マラソンの詳細はこちらから!🏃♀️🏃🏃♂️
スポーツで地域を元気に!館山市スポーツ課の活動
ーまずは自己紹介と、スポーツ課の担当業務について教えてください。
川名:スポーツ課長の川名です。1991年に新卒で一般行政職として入庁しました。スポーツ課での勤務が一番長く、通算で13年目です。もう、ここの仕事が体に染みついていますね(笑)

スポーツ課は、3つの目的を掲げて活動しています。「スポーツを通じた生涯学習」「市民の健康づくり」「スポーツ観光による地域経済の活性化」です。
課の中には、2つの係があります。市民運動場などの施設の維持管理といったハード面を担う「スポーツ施設係」と、スポーツイベントの企画・運営やスポーツ団体の支援といったソフト面を担う「スポーツ振興係」です。
後藤:副課長とスポーツ施設係の係長を兼務しています。民間企業で建築の設計や現場の仕事をした後、2012年度に建築技術職の経験者採用で入庁しました。都市計画課や食のまちづくり推進課などを経験し、スポーツ課は2年目です。
ハード面の整備が主な担当なので、建築の専門性を少しでも活かせればと思っています。体を動かすのが趣味なので、スポーツ課への異動は個人的に嬉しかったですね。

平野:スポーツ振興係長の平野です。2007年度に新卒で一般行政職として入庁しました。観光みなと課や税務課などを経て、この4月にスポーツ課へ異動してきたばかりです。
スポーツ振興係は年間30近いイベントに関わっており、その中心的な役割を担っています。毎日が新しいことの連続で、刺激的な日々を送っています!

ー館山若潮マラソン以外にも、年間30近いイベントがあるのですね!
平野:大きいものでは、5月の終わりに開催される「館山わかしおトライアスロン大会」、通称「タテトラ」があります。私も参加者から誘われたことをきっかけにトライアスロンを始め、人脈が広がりました。

また、波が穏やかな北条海岸の特性を活かしたオープンウォータースイミングの大会も年4回ほど開催されています。ユニバーサルスポーツの「ボッチャ」の体験会や、バレーボール教室、剣道大会など、本当に多岐にわたりますね。

後藤:スポーツ施設係は、市民運動場や体育館、柔剣道場、屋外の50mプールといった施設の維持管理と運営が主な業務です。


限られた予算の中で、いかに効率よく、安全に市民の皆様に使っていただける環境を維持していくか。知恵を絞る毎日ですが、そこが腕の見せ所でもあり、やりがいを感じる部分でもあります。
現場に出て自分の目で状況を確認して、計画を立てて対応していくのは楽しいですよ。
ランナー6,000人超が参加!一大イベント「若潮マラソン」の裏側
ー それでは、メインテーマである「若潮マラソン」についてお伺いします。このイベントは館山市にとって、どのような位置づけなのでしょうか?
平野:若潮マラソンは、端的に言えば、「市の一大イベント」ですね!毎年1月の最終日曜日に開催され、今年で46回目を迎える伝統ある大会です。
コロナ禍を経て少し参加者数は落ち着きましたが、それでも約6,000人ものランナーが全国から集まり、館山のまちを駆け抜けます。

沿道では多くの地元の方が温かい声援を送ってくださったり、個人でエイドステーション(給水・給食所)を出して応援してくださる方もいて、まさに地域に密着した、館山を代表するお祭りのようなイベントです。

ー6,000人規模のイベント運営、想像するだけでも大変そうです。職員の皆さんの役割分担はどのようになっているのでしょうか?
川名:スポーツ振興係長の平野が中心となり、全ての業務を采配しています。そして、スポーツ課の職員全員に役割があり、チーム一丸となって大会を運営しています。私は監督者という立場で、全体を統括しています。
平野:具体的には、大会の運営方針を決める実行委員会の事務局の仕事、業務委託契約、コースとなる道路の占用許可申請など、盛りだくさんです。
そして、若潮マラソンの魅力の一つが、多くのボランティアスタッフの皆さんです。ボランティアの募集や、応援職員(大会運営のサポートをする市職員)の業務マニュアル作成など、本当に多岐に渡る業務があります。
参加料収入だけでは運営が難しいため、協賛企業を募る業務はとても重要です。こちらは、後藤さんが担当しています。
これらを、私を中心に課のメンバーで分担して進めています。

ー平野さんは今年から担当で、かつ中心となって動かれていますが、プレッシャーはありませんか?
平野:実は、ランナーとして参加したこともありますし、他の部署にいた時も応援職員として関わっていたので、大会の雰囲気はなんとなく分かっていました。
ただ、いざ運営する側に立ってみると、業務の幅広さに驚きましたね。全体像を把握するのは大変ですが、やりがいを感じながら取り組んでいます。
ー後藤さんは協賛関係を担当されているのですね。
後藤:これまでご協力いただいている企業様へのご挨拶や、新たにご協力いただけそうな企業様へのご案内がメインです。これは、スポーツ課の生き字引である川名課長の顔の広さに助けてもらっています(笑)。
そのほか、飲食・スポーツ用品の出店やエイドステーションも担当しています。エイドではバナナ専門店のバナナや館山駅前の有名なパン屋さんのクリームパン、地元の銘菓なども提供します。


予測不能な事態の連続!テントが壊れ、会場は水浸しに?瞬時の判断が求められる、イベント運営の仕事
ー館山若潮マラソンの準備はいつ頃から始まるのでしょうか?
平野:準備はほぼ一年中行っています。4月に新年度が始まるとすぐに関係各所との契約手続きが始まり、8月にはホームページ公開、9〜10月にエントリー受付をします。
その後は、ゲストランナーの調整や、当日の詳細な運営計画を詰めていき、1月の本番を迎えます。大会後には実行委員会で反省会を行い、次年度の改善点を話し合い、それが終わるとすぐに次の大会の準備が始まる…というサイクルですね。
今の時期(9月)は、業務の8割くらいがマラソン関連で、これから本番に向けてどんどん忙しくなっていきます。

ーまさに一大プロジェクトですね。その中で感じる仕事の面白さや大変さは、どのような点にありますか?
川名:私がかつて担当者だった時の経験ですが、やはり参加ランナーや大会関係者、そして地域住民の方々、それぞれの声に耳を傾け、より良いイベントになるように改善していくプロセスはとても面白いです。
そして、結果として「今年の大会、良かったよ!」と声をかけていただけた時は、最高のやりがいを感じますね。
逆に大変なのは、天候のように予測不能な事態が起きた時です。その場で瞬時に的確な判断を下さなければならない。そこが一番苦労する点ですね。
平野:私は今年初めて担当するので、経験したことのない業務を手探りで進めていく難しさがあります。
過去の資料を参考にしつつも、常に「この場合はどうなるだろう?」と想像力を働かせながら、関係各所との調整を進めています。
関わる人が本当に多いので、皆が気持ちよく動けるように配慮する「調整力」がとても重要だと感じています。
後藤:私はこれまで応援職員として、主にエイドステーションを担当してきたのですが、ランナーさんが一気に押し寄せる時間帯は、まさに戦場です。
地域のボランティアさんが運営してくださるので、我々職員は、ボランティアさんがスムーズに動けるように黒子として支えるのが役目です。
大変な作業ですが、ランナーさんやボランティアさんが「今年も良かったね」「喜んでもらえたね」と満足そうな顔をされているのを見ると、こちらも本当に嬉しくなります。
全てが終わった後の達成感と、あの気持ち良さは格別ですね。

ーこれまでの大会で、特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
川名:私が担当していた時、大会当日にランナーを乗せた臨時列車が遅延し、フルマラソンのスタート時間に間に合わないという緊急事態が発生しました。交通規制の時間も決まっているので、単純にスタートを遅らせることもできません。
数時間の間に、関係各所と協議を重ね、コースを一部短縮するという苦渋の決断をして、何とか皆さんに走っていただくことができました。やむを得ず参加を諦めた方には参加料を返金するなど、その場その場で最善の策を考えて対応しました。本当に大変でしたが、やり遂げた時の安堵感と達成感は今でも忘れられません。
他にも、前日の強風で設営したテントが倒壊したり、会場が水浸しになって急遽除草シートで通路を確保したりと、トラブルは尽きないですね(笑)
平野:私も応援職員だった時に、前日の大雨で受付会場の地面がぬかるんでしまったことがありました。その時、職員たちが市内のホームセンターを駆けずり回って、除草シートを買い集め、来場者が歩く場所に必死に敷き詰めていた光景は衝撃的でした。
「こんなに大変なイベントだったのか…」と。まさか自分がその中心で動くことになるとは、当時は夢にも思いませんでしたけどね(笑)
後藤:エイドステーションの業務が終わった後の光景が印象的でしたね。平砂浦という美しい海岸線が広がる場所にあるエイドステーションを担当した時のことです。
ランナーが全員通り過ぎ、戦場のような忙しさが嘘のように静まり返った後、ボランティアの皆さんと一緒にゴミ拾いをしながら片付けをするんです。
そして、冷え切ったお弁当を食べながら、「今年も無事に終わったね」と労い合う(笑)その時に見上げた空の広さと青さは、本当に清々しくて…あの景色は、何度経験しても癖になりますね。
館山若潮マラソンの魅力
ーそれでは、今年の若潮マラソンの見どころを教えてください!
平野:今年のコースも、波静かな「鏡ヶ浦」や、海の向こうに富士山を望む海岸線、そして菜の花が咲き誇る「フラワーライン」など、絶景スポットが満載です。
コースは比較的フラットですが、後半にはアップダウンもあり、走りごたえのあるレイアウトになっています。走り終えた後の満足感は格別だと思いますよ!

地元の名産品が並ぶエイドステーションや、沿道からの温かい応援も若潮マラソンの大きな魅力です。
また、資生堂様の創業者が館山出身という縁で、昨年度からご協賛いただいています。素敵な参加賞があったり、会場では美容部員の方が日焼け止めの効果的な塗り方をレクチャーしてくれるブースも出展されたりします。
ぜひ多くの方にチャレンジしていただきたいです!
▼ 館山若潮マラソンの詳細はこちらから!🏃♀️🏃🏃♂️

ーありがとうございました!
後編として、館山の自然とアクテビティを楽しんでいるお三方から、館山の暮らしやについてお話をお聞きしました。(昼休みは海に泳ぎに行くことも…!?)こちらもぜひご覧ください!
後編はこちらから▶️ https://public-connect.jp/employer/45697/blog/3140
■参考リンク
スポーツ課 | 館山市役所
取材・文:パブリックコネクト編集部(2025年9月取材)



