市職員としても、父としても。阿久根市の建築職が語る、まちに残る仕事のやりがい
阿久根市役所
「自分が住むまちで工事をした証が、長期的に目に見えて残る。それが、この仕事の一番の魅力だと思っています」
そう語るのは、阿久根市役所都市建設課建築係で建築職として働く入庁6年目の竹下さん。鹿児島市出身で、福岡の大学で建築・土木を学んだ後、約9年間にわたって塾講師として理系科目を担当。その後、子どもとの時間を大切にしたいという思いからワークライフバランスを軸に転職を決意し、妻の実家がある阿久根市の職員採用試験に挑みました。現在は係長との2人体制で、市が所有するあらゆる建築物の設計・工事監理を担っています。
今回は、阿久根市での建築職の仕事内容、働く魅力・やりがい、そして職場の雰囲気について、たっぷりとお話を伺いました。
- 建物の間取りにワクワクした少年が、九年越しで建築の仕事へ
- 学校、市役所、市営住宅——市が持つすべての建物を、二人で守る
- 市内最大の中学校の改修、そして初めての大規模新築
- 定時を目指して、月1回の同期会。阿久根の職場の雰囲気とは
建物の間取りにワクワクした少年が、九年越しで建築の仕事へ
ー建築の仕事を意識されたのは、いつ頃のことですか?
竹下:高校生の頃ですね。純粋に建物を建てることへの興味があって、特に意匠系というか、建物内部の間取りやデザインを見るのがすごくワクワクするというか。それがあって、大学は福岡で建築・土木を学びました。
ー大学卒業後は、どのようなキャリアを歩まれたんですか?
竹下:大学時代にアルバイトをしていたこともあり、子どもに接することが好きだったので卒業後は塾の講師をしていました。小学生から中学生を対象に、理系科目を担当していました。
ーそこから、なぜ公務員の建築職への転職を考えられたんですか?
竹下:子どもが好きで塾の仕事を選びましたが、自分の子どもと接する時間がどうしても取れなくて。塾の仕事って休みも少ないですし、夜も遅い。子どもが育っていく間、ずっとあまり関われない状況にあるのが、個人的にすごく気にかかってしまったんです。
民間の建築会社も検討しましたが、ワークライフバランスが取れるという点で、公務員の方が当時の自分には合っているかなと思ったのがきっかけです。
ー多くの自治体の中から、なぜ阿久根市を選ばれたのでしょう?
竹下:妻の実家が阿久根で、結婚してからよく来ていたんです。自然も多くて非常に住みやすく、子どもを育てやすいという印象があったのが一番大きいですね。あとは、県や国だと転勤が多くなるので、拠点をあまり変えたくないという気持ちもあって、基礎自治体を選びました。

学校、市役所、市営住宅——市が持つすべての建物を、二人で守る
ー現在の業務内容について、詳しく教えてください。
竹下:主な業務は大きく二つあって、一つは市が発注する公共工事の設計と工事監理です。市が所有している建築物の改修や、必要であれば新築工事の設計・監理を行います。もう一つは、市が行っている補助事業の審査や事業管理ですね。
ー市が所有している建築物というと、具体的にどのようなものがありますか?
竹下:分かりやすいところで言えば、市役所の庁舎、小学校・中学校の校舎、市営住宅ですね。それから市民交流センターや体育館なども含まれます。これらの建物に関わる工事を、年間30件前後担当しています。
ー一つの工事が動き始めてから完了するまでの流れを教えていただけますか?
竹下:まず前年度に予算要求を行うところから始まります。施設ごとに所管している課が異なるので、各課にどんな改修をしたいかヒアリングをして、その内容に即した設計書や図面を作り、概算の工事費を算出します。
予算が通ったら年度が明けてから、より詳細な設計書・図面・金額の内訳書を作成して、入札に向けて発注資料を整えます。契約にて業者が決定したら、現場の代理人の方と現場でやり取りをしながら工事を進め、完了したら検査を行ってクローズという流れです。

市内最大の中学校の改修、そして初めての大規模新築
ーこれまで携わった工事の中で、特に印象に残っているものはありますか?
竹下:パッと思いつくのが二つあります。一つは昨年度、阿久根市内で一番規模の大きい阿久根中学校の校舎を長寿命化するための改修工事です。約一年かけて進めた工事で、私の子どもたちもおそらくそこに通うことになるので、そういう意味でも非常に印象に残っています。
ーもう一つはどんな工事ですか?
竹下:今まさに進めている、市立図書館の新築工事です。4月からスタートして、今も携わっています。うちの子どもたちは今の古い図書館によく連れていくんですが、階段も急でちょっと古くて、『早くできるといいね』という話を子どもとしているくらいです(笑)。
その図書館の新築工事に携われているのは、市の職員としても父としても、非常にやりがいを感じるところです。

ー自治体の建築職として、特に大変だと感じる部分はどんなところですか?
竹下:やはり税金を扱う仕事なので、設計にしても工事監理にしても責任の重さが違います。例えば、なぜこのデザインにしたのか、なぜこの改修内容にしたのかという根拠を、いつ誰に聞かれても説明できるようにしておかないといけません。そのために法律などをきちんと調べて、すべてに根拠を持った上で判断する必要があります。
ー逆に、自治体の建築職ならではの魅力はどんなところだと感じますか?
竹下:民間と比較すると、公務員の建築はやはり規模の大きい建物に関われるというのが一つの魅力です。市役所、学校、市営住宅といった大きな建築物の改修や新築に携われます。
そして何より、自分が住んでいるまちだから、工事をしたことが長期的に目に見えて残っていくんですよね。それが一番の魅力だと感じています。
定時を目指して、月1回の同期会。阿久根の職場の雰囲気とは
ー職場の雰囲気や、上司・同僚との関係はいかがですか?
竹下:係は係長と私の2人体制で、入庁してからほぼずっと一緒に仕事をさせてもらっているので、何か問題があったときの相談のしやすさや、アドバイスをもらいやすさという点では非常に風通しがいいなと感じています。
また建築係の特徴として、市が管理している建物はそれぞれ所管する課が違うので、いろんな課の職員の方々とやり取りする機会が多くて、人脈がかなり広がります。
ー業務外でのコミュニケーションはありますか?
竹下:同期とは月に一回くらい、食事や飲み会で集まっています。私が入庁したときの同期は年齢がだいぶ離れていて、大学新卒の子とは11歳差、高卒の子とは15歳差なんですが、同期という括りの中で仲良くしています。
あとは、子どもの小学校のPTA活動を通じて市役所の職員の方と接するきっかけができたり、地区の集まりでも市役所の職員の方が多いので、自然と交流できる場があります。

ーワークライフバランスについてはいかがですか?
竹下:非常に恵まれていると感じています。有休は年間20日あって、昨年もほぼ消化できました。ほとんど幼稚園や学校の行事で使うことが多いですね。
夏季休暇の3日も全部取れています。工事の発注前などは残業もありますが、基本的に係全員が定時で帰ろうという動きをしています。子どもの迎えがある中で、そこに困ったということは正直全くないです。
ー最後に、阿久根市の建築職を目指す方へメッセージをお願いします。
竹下:建築という分野を通じて市民の方へ社会貢献がしたいという方には、本当にやりがいも魅力も多い職種だと思います。自分が関わった建物がまちに残り続けるという達成感は、なかなか他では得られないものです。
またワークライフバランスを大切にしながら安定して働きたいという方にとっても、非常に良い環境だと思いますので、ぜひ挑戦していただければと思います。

ー本日はありがとうございました。
画面越しでもよく伝わる、穏やかで誠実な人柄。竹下さんは塾講師から建築職へという異色のキャリアを歩んできたが、「子どもと過ごす時間をちゃんと持ちたい」という率直な動機と、高校時代から変わらない建物への愛着が、今の仕事でまっすぐ重なっています。
自分の子どもが通う学校の改修を手がけ、子どもと一緒に通う図書館の新築工事を進める——そんな仕事のある暮らしが、阿久根市にはあります。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年5月取材)
この記事の官公庁・自治体
阿久根市は鹿児島県北西部に位置し、高松川河口の阿久根港を中心に古くから海・陸交通の要衝として海運業・商業が栄えたまちです。北部は激流が渦巻く日本三大急潮のひとつ黒之瀬戸を隔て長島町と接し、東部は出水市、南部は薩摩川内市と接しています。東シナ海に面した約40㎞にも及ぶ美しい海岸線や沖合およそ2㎞に浮かぶ阿久根大島は、海水浴や釣りのメッカとして知られており、毎年多くの観光客が訪れます。沿岸を洗う黒潮は至る所に亜熱帯の植物を育み、温暖な気候を利用した農業や水産業が盛んです。品質の高い数多くの生鮮品や加工品は、「アクネ うまいネ 自然だネ」の統一ブランドで全国に向けて出荷されており、なかでも特産品の「阿久根ボンタン」は全国有数の生産量を誇ります。
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