「公務員になりたいけれど、試験対策が……」 そんなハードルの高さに、あと一歩を踏み出せずにいる方は少なくないはずです。
もしも、分厚い参考書と向き合う時間の代わりに、「まちへの愛着」や「地域研究」がそのまま合格への切符になるとしたらどうでしょう。 愛媛県松山市では、令和8年度から教養試験や専門試験を行わず、市への熱意や理解度を重視する新たな試験区分「事務職上級(早期募集枠)」を導入します。
「松山市に熱い思いを持っている人に来てほしい。」 そう語るのは、松山市役所の採用担当者、秀野さんです。 なぜ今、新たな試験制度を設けたのか? そこで求められる人物像とは? さらに、面接や情報収集のポイントなど、松山市役所だけではなく、公務員を目指している方必見の内容も語ってくれました。
「松山が好き」という熱意を重視。新試験区分とは?
ー早速ですが、新たに導入される試験区分について教えていただけますか。
秀野:松山市役所では、令和8年度の職員採用試験から、新たに「事務職上級(早期募集枠)」という試験区分を設けます。その名のとおり早期に募集するもので、従来の事務職上級と比較して、約2か月前倒しのスケジュールで選考を行い、最終の合格発表を6月上旬に行います。
具体的には、3月に申込み、4月から5月にかけて筆記試験や口述試験を行い、6月上旬に最終合格発表を行うというスケジュールとなっています。民間企業の就職活動と並行して、選考を受けることができます。
さらに、従来の教養試験や専門試験を行わず、第1次試験で「松山市政に関する問題」を出題するのも大きな特徴です。
この試験区分の目的は、何よりも「松山市に熱い思いを持った方」に来ていただくこと、そして、公務員試験対策がネックとなり、民間企業を中心に就職活動をしている方にも興味を持ってもらうことです。
実は採用担当者の中では、「大好きまつやま枠」と呼んだりしています。
松山市政に関する問題は、「広報まつやま」などから出題します。この対策としては、特別な公務員試験対策というよりは、就職活動の際の企業・団体研究と同じような感覚で取り組んでいただけば良いんじゃないかなと思います。広報まつやまの普段は読まない記事にも目を通していただくことになると思いますので、「松山市役所はこんなこともしているんだ!」といった、新たな発見もあるはずです。

ー試験の趣旨も、試験形態もとても素敵ですね。この試験区分では、第2次試験以降はどのような選考方法になるのでしょうか?
秀野:第2次試験では基礎的な能力を見るSCOAと個別面接、そして第3次試験でも個別面接を行います。
SCOAは民間企業の採用活動でも広く使用されており、公務員試験に特化した対策は不要です。
ー従来の試験区分との併願も可能なのでしょうか?
秀野:従来の「事務職上級」との併願も敢えて可能としています。
万が一、早期募集枠では残念な結果になったとしても、松山市に対して熱い思いを持ち、松山市政への理解が深い人を大切にしたいと思っています。
特に個別面接では、面接官からも緊張をほぐすような声掛けもしていますが、日常生活とは異なる少し特殊な場面で、どなたも緊張していると思います。そうした中で、もしかすると受験された方の魅力を把握しきれていないこともあるかもしれません。
ですので、松山市に対して熱い思いを持ち、市政について十分理解していただいている人については、ぜひ従来の事務職上級の試験にも再度挑戦していただき、ご自身の魅力を表現していただければと思っています。
求めるのは「自分の言葉」で語れる人
ー職員採用にあたり、どのような人材と一緒に働きたいと考えていますか?
秀野:松山市では、「現地・現場を大切に、市民目線で考え、前向きにチャレンジし続ける職員」を求めています。
少しかみ砕いて説明すると、「松山市をより良くしたい!」や「松山市民の幸せや笑顔のために働きたい!」という熱い思いを持っていて、かつ、「前に踏み出す力」「チームワークを築く力」「考え抜く力」が高い方です。
ー現場でのコミュニケーション能力も重要そうですね。
秀野:そうですね。松山市役所は、市民の皆さんにとって一番身近な官公庁です。
例えば福祉の現場などに出た時に、市民の皆さんが「この人なら安心して相談できる」と思ってもらえるかどうかは、市職員としてとても大切です。試験全体でも、しっかりコミュニケーションが取れる人かどうかは重視しています。

ー口述試験では、どのような質問をされることが多いでしょうか?
秀野: よく質問されることとしては、志望動機や入庁後に取り組みたいことなど、熱意に関することや、これまでの生活の中での具体的なエピソードをお聞きして、その人の持ち味をお聞きすることが多いです。
ー具体的にどのような点を見ているのでしょうか?
秀野: 熱意に関しては、その思いの真意としてどのようなことがあり、その気持ちにブレはないかを見ています。
このほか、様々な能力に関する質問では、具体的な場面を挙げていただいて、その場面でどれくらい力を発揮できたのか、また、その力を入庁後も発揮していただけそうかという点を見ています。
ちなみに、面接でもったいないと感じるのは、あらゆる質問の答えを用意してきて、それをロボットのように話す方です。時間を割いて一生懸命準備してくれたことは伝わるのですが、その人の素顔が見えにくく、どんな人なのかが面接官には伝わりづらいんです。
ー完璧さよりも「人柄」が見えることが大切なんですね。
秀野:その通りです。
松山市職員として働く中で、市民の皆さんとのやり取りは、マニュアルどおりには進まないことも多いです。法律の制約などで譲れない部分については、市の主張をしっかり伝えなければならない場面もありますし、市に裁量がある部分については、柔軟に対応するなど、臨機応変な対応も必要になります。
市民に近い基礎自治体だからこそ、「市民の前に出てもらい、様々な状況にもしっかり対応できるポテンシャルがあるかどうか」という点を重視しているとも言えると思います。
「面接カード」は自分をアピールする最強のツール
ー志望動機や自己PRを考える上で、アドバイスがあればお願いします。
秀野:志望動機は、素直な気持ちで自分の言葉で書いていただければ大丈夫です。
例えば、県内出身の方であれば「ずっと住んできて恩返ししたい」「幼少期から訪れていて好きなまちだから」という理由を挙げる方が多いですが、どれが正解というものは全くありません。
受験いただくからには何かしら理由があるかと思いますので、なぜ受験しようと思ったのかという点について、飾らず、思ったまま伝えていただきたいですね。
また、思いを伝える手段としてぜひ活用してほしいのが、最終面接前など、選考途中で提出していただく「面接カード」です。
ー「面接カード」とはどのようなものですか?
秀野:ご自身のこれまでの経験の中で、特に力を入れて取り組んだことなどを記載していただくシートで、面接官はこれをもとに深掘りして質問をすることが多いんです。
つまり、ここに「聞いてほしいこと」を書いておけば、自分の得意な話題に持ち込むことができるわけです。ぜひ上手に利用してほしいですね。
ー大きな成果がないなど、エピソードに自信がないという方はどうすればいいのでしょうか?
秀野:私たちは、エピソードといっても突飛な経験や特別な実績を求めているわけではありません。
日常の中のアルバイト、部活、サークル、学業の中で、受け身ではなく「自分で考えて何かに取り組んだ経験」などを伝えてもらえれば大丈夫です。
たとえ、それが就職活動のための取り組みであっても、私は構わないと思います。動機はどうであれ、自分で考えて行動したことは、きっとご自身の成長に繋がっているはずだからです。
情報収集のコツと、未来の受験者へのメッセージ
ー松山市役所の情報を集める際、おすすめの方法はありますか?
秀野:松山市職員採用情報サイト(パブリックコネクト)を確認していただくほかに、実はおすすめなのが「広報まつやま・4月15日号」です(笑)
毎年この号では、その年度の主要な事業を紹介しているので、松山市が今どこに力を入れているのかが一目でわかるんです。就職活動にも役立つ情報がギュッと詰まっていますよ。
また、松山市役所業務説明会(編集部注│令和8年3月23日(月)開催、申込期間:2月26日(木)~3月16日(月))やオープンカンパニーなど、実際に職員と話すことができるイベントにも参加して、職員の雰囲気を感じていただくのも、松山市役所を知るための近道ですね。

ー最後に、受験を検討している方へメッセージをお願いします。
秀野:「公務員試験対策をしていないから自分には無理かな」と思う必要はありません。
今回の採用試験から、公務員試験対策不要の試験区分「事務職上級(早期募集枠)」を新たに設けましたので、松山市に対して熱い思いを持っている方に、ぜひ申し込んでいただきたいです。
松山市政についての知識は必要ですが、それほどボリュームがあるものではなく、いわゆる企業・団体研究の範疇です。
公務員と聞くと「お堅い」イメージを持たれるかもしれませんが、松山市役所には面白い仕事や人がたくさん待っています。仕事のやりがいや公益性はとても高いですし、給料や働き方、休みも安定しています。何より松山市に安定して住み続けられるという魅力もあります。
【聞きにくい!?給与のことを徹底解説!日本一詳しい!松山市役所の給与】
【公務員としての就職先。「どこに住む」から、就職先を考えてみてはどうですか?松山市の「住みやすさ」の秘密に迫る!】
そして、自分の住んでいる地域のために働く側面があり、ある意味「自分や家族のために働いて、それで給料をもらえる」という状況になります。
ー本日はありがとうございました。
秀野:ありがとうございました。飾らないあなたの言葉で、ぜひ松山市への思いを伝えてください。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年2月取材)





