頑張るなら、自分の故郷のために。町営住宅の修理から特産品のPRまで─大淀町役場・入庁14年目の仕事

大淀町役場

2026/10/29

「これを見て入庁してきた人に、顔向けできないようなことは言いたくない」

常に誠実に話してくださったのは、奈良県大淀町役場の建設環境部建設産業課で働く、入庁14年目の福西さんです。

一般事務職として、人権施策推進室、総務課、新型コロナウイルスワクチンの接種体制づくり、子育て支援の部署を経験してきました。令和7年度には奈良県庁へ派遣され、現在は商工・観光の担当として、梨やお茶といった特産品を全国にPRしています。

今回は、小規模自治体だからこその仕事の幅と、大淀町役場での働き方の実態について、じっくりとお話を伺いました。

 

 


就職直前での内定辞退。「故郷のために」という理由

ーまずは、入庁までの経緯から教えてください。

福西: 出身は大淀町で、高校、大学は町外でしたが、人生のほとんどはこの町に住んでいます。就職活動は普通にしていて、早く決まったんですよ。営業職だったのですが、定年まで働く姿がなかなか想像できず、失礼ながら直前になって辞退しました。その後、1年間準備をして、大淀町役場に入庁しました。

ーなぜ、公務員を選ばれたのでしょうか。

福西: ポジティブな理由ばかりではなく、ある程度安定した環境で働きたいという思いがありました。家族も公務員になると喜んでくれる、という理由も一つです。

ー他の自治体も受験されたそうですね。

福西: 受けました。ただ、仮に受かっていても大淀町に入庁していたと思います。職員によって仕事への向き合い方は違いますし、「仕事だからやる」という人もいれば、「楽しい」という人もいるでしょう。そういう中で、僕にとってモチベーションを維持する一番の理由は出身地であることでした。「どうせ頑張るのなら、自分の故郷のために頑張りたい」という気持ちは強いです。

ー地元への思いは、もともと強かったのでしょうか。

福西: いや、それが正直なところ、働いていくうちに蓄積されていったものだと思います。もともとは単なる出身地という意識で、当時は今ほど深く考えていませんでした。それが自然と口に出るようになったということは、思っている以上に大淀町を大切に感じているのだと思います。

町営住宅の修理から、ワクチン接種の体制づくりまで。想像とはまるで違った役場の仕事

ー最初の配属は人権施策推進室だったんですね。

福西: 人権啓発が主業務でしたが、実務として多かったのが町営住宅の管理です。家賃の設定や、なかなかお支払いいただけない方への集金などですね。あとは本当に日曜大工のようなもので、「ここが壊れたから見に来てほしい」という依頼に対し、最低限の修繕を行うこともありました。

ー思い描いていた役場の仕事とは、ずいぶん違いますね。

福西: 違いましたね。住民の方の生活空間に直接伺うことになりますから。僕は正直、住民票の発行のような業務を入庁前にはイメージしていたので、びっくりした記憶があります。

ー次の総務課では、どんなお仕事をされていたのでしょうか。

福西: 5年弱いました。メインは庁舎の管理です。例えば、配管が詰まったらまずは自分で確認し、直らなければ業者さんにお願いする。便利屋さんのような役割ですね。また、昔は役場の電話番号が一つしかなく、代表番号にかかってきたものを各課に振り分けていたのですが、僕がいた間に各課直通のダイヤルインにするなど、仕組みから変える取り組みも行いました。

ー令和3年2月には健康増進課へ異動し、新型コロナワクチン接種を担当されます。

福西: 接種体制を作るのが急務というタイミングでの異動でした。大変でしたよ。残業も休日出勤も非常に多かったです。「ここから予約です」と案内すると、電話回線がパンクするような状況でしたから。

ーそれだけ忙しいと、離職を考える方も出てきそうですが。

福西: ですが今思えば、目標が非常に明確でした。行政業務には「これをしたらいいのでは」と思っても、「他への影響があるよね」といった調整が求められ、簡単には進まないことも多いものです。あのときは過度に細かな部分を気にすることなく、「早急にワクチン接種体制を整える」という課題に集中して走りきれた部分はあったと思いますね。

ーその後の健康こども課では、どのようなお仕事を。

福西: 保育所の学童保育の入所審査や、保育料未納の方への徴収などの業務を行いました。また、子育て支援の拠点となる新たな施設を立ち上げるタイミングでしたので、その業務にも携わりました。子ども園、発達支援室、病後児保育室、子育て支援センターの機能を集約した「未来樹」という施設を令和6年11月にオープンしました。「未来樹」という名称の決定、子育て支援を目的としたクラウドファンディングや企業版ふるさと納税の募集、オープニングセレモニーの開催等を担当しました。新施設の立ち上げという普段はなかなかない業務をこなすことで、自身の成長にもつながったと実感しています。

県庁への出向で気づいた「野球とソフトボールくらいの違い」。職員約200人のまちだからできること

ー令和7年度には、奈良県庁へ出向されています。市町村との違いは感じましたか。

福西: 奈良県庁では県庁内のDX推進を担当していました。同じ行政と言っても、野球とソフトボールくらいの違いがあるように感じました。似ているようで、やっていることは全く違います。わかりやすいところで言うと、県庁にいたときは住民の方と直接話をする機会がほとんどなく、県や市町村の職員さんとのやりとりばかりでした。人脈も業務の知識も乏しい中で大変でしたが、同課のみなさんに助けていただきながら、様々なことを学ばせていただきました。この経験を大淀町役場に少しでも還元できるよう意識しています。

ー職員約200人という規模だからこそできることは、どんなところでしょうか。

福西: 職員が200人の町でも、50人の町でも同じことを達成しなければなりません。その点、大淀町は規模が大きすぎないため、役職が高くなくても自分のペースで進められる余地があります。住民の方と顔を合わせる機会も多く、「ありがとう」という感謝や、お叱りも直接いただけるため、仕事の手応えは感じやすいと思いますね。

ー逆に、住民対応が得意ではない方には難しいでしょうか。

福西: 苦手な職員もいますし、やってみて気づくこともあるでしょう。ただ、業務内容は多岐にわたるので、自分に合う業務もきっと見つかるはずです。「この部署が合わなかったら、辞めるしかない」というわけではなく、能力を活かせる別の部署があるかもしれない。それはこの規模感の強みだと思います。

今週は名古屋、来週は広島。全国へ行く仕事と、これから来る人へ

ー現在の建設産業課でのお仕事を教えてください。

福西: 町の魅力を伝え、商工や観光の振興につなげるのが現在の業務です。大淀町は梨が特産品なのですが、ちょうど今の時期ですね。毎週土日に各地へ出向き、梨やお茶のPRをしています。今週は名古屋、来週は広島、その次の週は東京です。

ー福西さんは、大淀町という町をどう捉えていらっしゃいますか。

福西: すぐ近くには世界遺産の吉野山があり、もう少し奥へ行けば洞川温泉、そのほかにもたくさんの魅力的な地域がたくさんあり、そこに繋がる近鉄電車やバスの発着地という交通の結節点としての特徴があります。ただ、なかなか町そのものが目的地になりきれていないという課題も感じています。

ー入庁の動機は「安定した環境で働きたい」でした。休暇や残業の実態はいかがですか。

福西: 部署によりますが、休暇は問題なく取得できます。それに対してネガティブな反応をする職員も少ない印象です。夏季休暇のような特別休暇もありますし、育休の取得率も上がっていて、男性職員も積極的に取得しています。復帰後も短時間勤務制度を利用して働くことができ、入庁した当時と比べると圧倒的に変わりました。繁忙期には他係からの応援を募る制度も実施され、業務量の平準化にも取り組んでいます。

ーその「安定して働きたい」という思いは、実現できたのでしょうか。

福西: はい。総じて、働きやすい職場だと思います。忙しいときでも分担し、配慮し合える環境です。職員自身が家庭を重視し、両立できる環境が整っているので、そのあたりの心配は不要かと思います。

ーこれから入る方に期待することはありますか。

福西: 人口が減っても仕事は減らず、やることは増え続けています。職員数はそう増やせませんから、効率化は必須です。ただ、伝統や慣習を変えるのは難しいものですよね。業務の効率化は、言い方はあれですが、年配の方より若い方のほうが得意だと思います。パソコンや生成AIの活用など、新しい感覚をお持ちの方が来てくれたら、非常に助かります。ただ、特別なスキルがなくても、住民さんのために前向きに仕事にとりくめる方が来ていただけると、個人的には嬉しいですね。

ー民間企業からの転職者にも期待されていますか。

福西: 民間の方から見ると、行政のやり方は「なぜこのようなやり方なのだろう」と感じることが多いはずです。それは県庁を経験した私ですら思うことでした。ずっと行政の中にいる人たちだけでなく、異なる視点や柔軟な考え方を持つ方と一緒に取り組むほうが、結果として住民さんのためにもなると確信しています。

ー最後に、大淀町役場を目指す方へメッセージをお願いします。

福西: 大淀町で働くということは、生活の大半をこの町の仕事に注ぐということです。だからこそ、町に魅力を感じたうえで来ていただきたいですし、その想いが自身のためにもなるはずです。公務員になりたいだけなら近隣の市町村でもいいわけですが、せめて一つでも「大淀町がいい」と思える理由があるほうが、働き出してからの支えになります。出身でも、通いやすさでも構いません。何か一つでも魅力を感じてくれた方に、ぜひ応募してもらいたいですね。


ー本日はありがとうございました。

取材・文: パブリックコネクト編集部(2026年9月取材)

 

これまで多くの方にお話を伺ってきましたが、福西さんはとりわけ飾らず、これから応募し、入庁される方に向けて本音で語ってくださった印象が残っています。

はじめから「大淀町がいい」と100%思える方は、そう多くないかもしれません。それでも、働きながら少しずつこのまちに惹かれていくことは、きっとあります。

「大淀町の規模だからできること」にぴんと来た方、そして「大淀町がいい」そう思える理由が一つでもあれば、ぜひ一度、受験をご検討ください。

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奈良県の中央、紀伊半島のほぼ真ん中に位置し、南に吉野川と世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」などの吉野山群を望みます。 古くから大和盆地と吉野地方を結ぶ交通の要衝として栄え、現在も電車や車で奈良市や大阪市内まで約1時間で行けるなどの好立地にあり、自然と利便性を兼ね備えた良好な住環境にあります。 聖徳太子が創建したとされる「世尊寺」や、修験道ゆかりの「柳の渡し」があり、能楽のルーツとかかわりのある「桧垣本猿楽座」が活躍した場所でもあります。

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