旅行業界から市役所へ。前職の経験を力に変えて働く、春日市職員のリアル
春日市役所
「前職で培ったスケジュール管理の力は、今もしっかり活きています」
そう話すのは、春日市役所高齢課で指定指導を担当する岩武さんです。大学卒業後、旅行会社で3年間勤めたのち、令和5年度に春日市役所へ入庁しました。
以前は個人旅行の手配から修学旅行の添乗まで幅広くこなしていた岩武さんは、なぜ公務員という新たな道を選び、数ある自治体の中から春日市にたどり着いたのでしょうか。そして、異業種で培った経験は今の仕事にどう活きているのでしょうか。今回は、旅行業界から市役所へと歩んだ道のりと、現在の仕事のやりがいについて、たっぷりとお話を伺いました。
- 部活の遠征で知った旅行業界。結婚を機に選んだ、春日市というあたたかい場所
- 100を超える介護事業所と向き合う日々。苦情ゼロを目指した小さな改善
- プロと対等に話せるように。日々の勉強と、対応で意識していること
- 23人の同期と歩んだ3週間の研修。産休・育休を経て、今の働き方へ
部活の遠征で知った旅行業界。結婚を機に選んだ、春日市というあたたかい場所
ーまずは、入庁までの経歴を教えてください。
岩武:新卒で旅行会社に就職して、丸3年間働いてから市役所に入庁しました。地元は大分県大分市で、保育士や幼稚園教諭の資格が取れる大学に進みたくて福岡の大学に進学したんですが、就職はまったく別の道を選ぶことになったんです。
旅行が元々好きなこともあったのですが、大学の部活で遠征の打ち合わせをする中で旅行会社の方と接する機会があり、そこで仕事を知って、旅行業界を目指すようになりました。
ー旅行会社では、具体的にどのような業務を担当されていたのですか。
岩武:コロナ禍での入社だったので、最初は仕事があまりなかったんです。まずは個人旅行の手配から始めて、最後のほうは月に2本ほど修学旅行を担当していました。手配から添乗まで、一通り経験しましたね。
ーそこから市役所への転職を考えたきっかけを教えてください。
岩武:一番大きかったのは結婚です。旅行会社の仕事は月に何度も出張があったので、将来のライフイベントを考えたときに難しいかなと思ったんです。市役所を選んだのは、母親が公務員で、その背中を見て育ってきたからというのもあります。
ー数ある自治体の中で、春日市を選んだ理由はありますか。
岩武:現実的なところで言うと、SPIで受験できて中途採用の実績も多いと知ったのが大きいです。対策が必要な公務員試験というのは自分には難しいと感じていたので、SPIで受けられるのはすごく魅力的でした。それに、前職が営業だったので車で春日市に来ることも多くて、そのときの街の雰囲気が明るくて良いなと感じていました。
ー街の雰囲気というと、どのような点が印象的だったのですか。
岩武:緑が多い印象があって、ちょうど市制50周年の時期に来たときは、街中にピンクの横断幕がたくさん飾られていて、すごく明るい雰囲気だったんです。それが今でも心に残っています。

100を超える介護事業所と向き合う日々。苦情ゼロを目指した小さな改善
ー現在の高齢課でのお仕事について、具体的な業務内容を聞かせてください。
岩武:市内にたくさんある介護事業所さんとやりとりをして、施設の中を調査したり、事業所の指定をしたりしています。書類や契約書、重要事項説明書などをすべて確認して、適切なサービスが提供されているかを見る、監査に近い業務です。あわせて、窓口では介護保険の給付に関する申請の受付や支払いの処理も担当しています。
ー事業所の指定指導のお仕事は、入庁してからずっと担当されているのですか。
岩武:実は、事業所の指定等を担当するようになったのは、育休から復帰した今年度からなんです。それまでは介護サービスにかかる費用の補助業務などがメインでした。
ー指定している介護事業所は、どのくらいの数があるのですか。
岩武:春日市の方だけが利用できる事業所もあれば、市外にあって春日市の方が利用するために指定している事業所もあるので、数としては全部で何百とあると思います。新規の指定は月に1〜2件ほどで、既存の事業所については6年に1回、更新の手続きを行っています。
ーこれまでのお仕事の中で、成果につながったと感じる出来事はありますか。
岩武:介護保険は8月に年度が切り替わって、新しい認定書をお送りするんですが、以前はその発送が8月に入ってからになっていて、毎年「8月からのはずなのに届かない」というお問い合わせが多く来ていたんです。
それを7月中にお届けできるよう業務のスケジュールを見直したところ、今ではスムーズにお届けできるようになり、安心してサービスをご利用いただけるようになったと感じています。
ー制度は毎年のように変わると伺いましたが、その対応も大変なのではないですか。
岩武:そうですね。国の制度が1年単位で変わることが多いので、そのたびに申請書類や規則を全部見直さないといけません。いつまでに何を用意するかをスケジュールしながら進めるのが大変で、今年は特にそう感じました。そうした制度対応に加えて、窓口では預貯金通帳の提出をお願いすることもあるので、丁寧に説明するよう心がけています。

プロと対等に話せるように。日々の勉強と、対応で意識していること
ー未経験で介護の分野を担当することになり、最初は戸惑いやギャップもあったのではないですか。
岩武:制度がとにかく難しくて、最初は知らないことばかりでした。介護保険という制度自体が身近ではなかったので、1から法律や仕組みを勉強するのは大変でしたし、事業所さんは専門の方々なので、皆さんとしっかり対等にお話しできるように、毎日調べたり本を読んだりして知識を加えるようにしています。
ー市民の方と接するときに、意識していることはありますか。
岩武:高齢者の方が多いので、はっきり大きな声で、ゆっくり丁寧に伝えるように意識しています。窓口でも電話でも、制度の説明はどうしても難しくなりがちなので、専門用語をかみ砕いて伝えることを心がけていますね。
ーこの仕事にやりがいを感じるのは、どんな時ですか。
岩武:一番は、市民の方に「ありがとう」と言ってもらえることです。市役所での申請は難しく感じる方が多いですし、特に高齢者の方にとってはデジタル化が進んで難しくなっていると思うので、窓口や電話で説明したあとに「わかりやすかった、ありがとう」と言っていただけると、自分の説明がきちんと伝わったんだなと嬉しくなります。
ー前職での経験が、今の仕事に活きていると感じることはありますか。
岩武:旅行会社時代はお客様のスケジュールを全部把握しないといけなかったので、その経験は今のタスク管理にも活きていると思います。市役所は始業・終業の時間が決まっていて最初は堅い印象を持ったんですが、決められた時間の中で自分で仕事の計画を立てて進めていくスタイルは、意外と自分に合っていると感じています。

23人の同期と歩んだ3週間の研修。産休・育休を経て、今の働き方へ
ー入庁後に3週間の研修があったと伺いました。どのような内容で、同期の方々とはどのように過ごされたのですか。
岩武:市役所とはどんなところかというところから、いろいろな部署の先輩方などに直接来ていただいて、仕事の内容を説明してもらいました。座学が中心でしたが、他の部署の様子を見学する時間もありましたね。
同期は23人いて、中途採用が6人、18歳で入った高卒の方もいるくらい年齢層が幅広いんですが、3週間みっちり一緒に過ごしたことですごく仲良くなりました。ほとんどの部署に同期がいるので、仕事で困ったときに相談できるのがすごくやりやすいです。
ー産休・育休も取得されたそうですね。
岩武:1年6か月ほどいただきました。子育てに専念できるようにと、上司からも温かい言葉をかけていただいて、復帰後も子どもの体調不良で休むときなど、周りの方が快く送り出してくださるので、子育てをしながらとても働きやすいと感じています。そうした支え合いは同期や先輩との間でも感じていて、わからないことをすぐに聞けるのも、この職場ならではだと思いますね。
ー最後に、これから公務員を目指す方へメッセージをお願いします。
岩武:私自身、春日市には住んだこともなく、正直あまり縁がなかったんです。でも実際に働いてみたら、環境も働いている人もすごく良くて、もっと好きになりました。今はあまり縁がないと感じている方でも、ぜひ一度、春日市役所で働くことを考えてみてほしいです。働いてみて初めて分かる良さが、きっとあると思います。

ー本日はありがとうございました。
岩武さんの受け答えからは、旅行会社時代に培ったスケジュール管理の力を活かしながら、日々の窓口対応や事業所とのやりとりに丁寧に向き合う姿勢が伝わってきました。
とくに、認定書の発送時期を見直して長年の苦情をなくしたというエピソードは、前職での経験が地道な業務改善にもつながっていることを感じさせるものでした。異業種からの転職に不安を感じている方にとって、この記事がひとつのヒントになるかもしれません。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年8月取材)
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