置かれた場所で咲く。回り道の先で見つけた、豊田市役所での働き方
豊田市役所
「落としてもらって、結果、いろいろな経験ができて、自分の価値観や人生の幅が広がって、ありがたかったなと思っています」
そう穏やかに振り返るのは、豊田市役所の人事課で人事担当長として働く松田さん。
平成26年度に任期付正規職員として入庁し、正規化を経て現在は3人の部下とともに、職員の人事異動や人事評価制度の運用などを担っています。
実は松田さん、新卒のときに一度、豊田市役所の採用試験を受けて不合格になっています。その後、カーディーラーの営業職を経験し、結婚・出産、そして専業主婦の時期を経て、あらためて市役所職員の道へ。ストレートに入庁した職員とは少し違う道のりを歩んできました。
今回は、公務員を目指す方や、ライフステージの変化とキャリアの両立に悩む方に向けて、松田さんの歩みと、豊田市役所という職場の魅力について、たっぷりとお話を伺いました。

「羽ばたくかもしれないじゃん」。都会を経て気づいた、地元・豊田で働く意味
ー松田さんは豊田市のご出身ですよね。大学で都内に進学されるときから、就職は地元に戻ろうと決めていたんですか?
松田:いや、全然決めていなかったですね。むしろ「羽ばたくかもしれないじゃん」って親に啖呵を切って、一人暮らしを始めました。「戻って来い」って言われていたんですけど、「そんなことわからないじゃん」って。でも結局、地元が良くなって帰ってきちゃいました。
ー地元・豊田のどのあたりが良くなったんですか。
松田:一旦離れて外から豊田市を見てみると、生活上の不便の少なさ、「ほどよく都会でほどよく田舎」な地元の住みやすさを改めて感じました。また、就職活動をするうえで地元の産業に貢献したいという思いも強くなって、戻ってきました。
松田:実は、新卒のときにも豊田市役所を受験したのですが、不合格だったんです。それで並行して受けていた民間企業にご縁をいただき就職しました。人と関わることが好きという自己分析と、一大産業である自動車産業に貢献できる仕事をと考えたとき、カーディーラーの営業は女性が少ないから、その世界に飛び込むのも面白いかなと思い、選択しました。
当初思い描いていた進路とは異なりましたが、この先どんなキャリアを歩むにしても「置かれた場所で咲く」ことが大事と考えて、とにかく目の前の仕事を頑張ろうと思いました。
今思えば、当時豊田市役所に落としてもらったから民間企業での経験ができ、自分の価値観や人生の幅が広がりました。ありがたかったなと思いますね。
ディーラーで感じた「超えられない一線」。専業主婦を経て社会復帰へ
ー営業の仕事をするなかで、キャリアの方向性に葛藤を感じたと伺いました。どんなところに「超えられない一線」を感じたんですか?
松田:カーディーラーの営業は厳しくもやりがいのある仕事で、お客様や上司・先輩に育てていただきながら充実した日々でした。一方で、自分のやりたいことと仕事としてできることの間に「超えられない一線」を感じました。営業では、基本的には車を通してしかお客様と関われません。お客様との交流が深まって知れば知るほど、生活の根幹・基盤にあること(例えば子育て、教育、地域活動)が、生活の質を上げていくことが分かってくるんです。でも、そういうことは営業マンとしては介入できない。目の前のお客様のお役に立ちたいと思えば思うほど営業マンでは限界がある、自分のやりたいことはやはり公務員なのではないかと考えるようになりました。
車を買うことは金銭的にも大きな意思決定で、その裏にはライフステージや人生の変化がある。お客様の人生に寄り添いたいのに、立場上そこには踏み込めない——その違和感が、その後の選択につながっていきます。

松田:ディーラーで育休を取る選択肢もありましたが、キャリアチェンジの機会と捉えて出産を機に退職し、1年間専業主婦を経験しました。最初はワクワクしていたものの、2週間で「こりゃ向かないな」と感じました。私は家のことをきちんとやれる性分ではなかったんですね(苦笑)。家事、育児を仕事としてこなす専業主婦の方は本当に尊敬します。
笑いながら語られるこのエピソードにこそ、松田さんらしさがにじみます。もともと「ずっと専業主婦でいよう」とは思っていなかったこと、そしていつか公務員に挑戦したいという思いを持っていたことが、社会復帰への背中を押しました。
会計年度任用職員から担当長へ。段階を踏んだキャリアと、夫婦「半々」の子育て
ー社会復帰にあたって、いきなり正規職員に挑戦するのではなく、段階を踏まれたんですよね。
松田:そうですね。ブランクがありますし、子どもも0歳児入園になるので、まずはパートからと考えました。ゆくゆくは公務員になるという目標がある中で就職活動をし、とよた男女共同参画センター(当時)の特別任用職員の仕事にご縁をいただきました。当時私を採用してくださったセンター職員の皆さんには足を向けて寝られません(笑)
平成25年度に特別任用職員(現在の会計年度任用職員)として同センターに勤務。平成26年度には任期付正規職員として採用され、平成30年度の正規化試験に合格して人事課へ。令和7年度からは人事担当長を務めています。段階を一つずつ踏みながら、着実にキャリアを重ねてきました。
同センター時代には、業務に関連する分野の知識を磨きたいと、国家資格キャリアコンサルタントも取得しています。
松田:女性の活躍支援や、学生のキャリア支援を業務としてやっていたので、業務の質が高まればいいなと思って取得しました。結果として現在の人事課の業務にも生きており、当時は試験勉強、仕事、子育ての両立が大変でしたが挑戦してよかったと思います。
ー子育てをしながら働くうえで、ご家庭ではどんな役割分担をされているんですか?
松田:夫婦の分担で言うと半々です。ざっくりと私が料理担当、夫が掃除担当、子どものことは一緒に。早く帰れた方が洗濯回しや子どものお風呂・寝かしつけ等をして、遅い方が残りをやる、という感じで日々を回しています。また、双方の両親とも近くに住んでいるため、繁忙期やいざというときにはすぐに助けてもらえる環境で、本当にありがたい限りです。
お互いの得手・不得手を理解し合った、無理のない分担でした。

ーワークライフバランスを取りながら働く環境として、豊田市役所はどう見えていますか?
松田:子育て世代職員の立場で言えば、とても恵まれていると思います。育休、子育て関連の時短勤務制度だけでなく、フレックスや在宅勤務等、制度がしっかり整っています。
加えて、豊田市役所の中では、性別に関わらず『制度利用は推進していくべきだよね』という意識が浸透していると感じますし、フレックス等を活用した柔軟な働き方も当たり前。
制度が整っていて、選択しようと思えばできる環境がある。個々の事情を我慢しすぎず、自分の選択の中でいろいろな働き方をチョイスできる。働き続けるという意味で、非常に恵まれていると思っています。そういった環境があるからこそ、仕事で返したいという思いが強いですね。
市民・現場、チームワーク、仕事を楽しむ。挑戦を良しとする風土のなかで
ー豊田市役所には自然体で話していて面白い方が多い、と取材を重ねるたびに感じます。ユニークな人がユニークでいられる土壌があるように思うのですが、それはなぜなんでしょう?
松田:お褒めいただきありがとうございます。唯一これ、という理由はなく、先輩方が長年積み重ねてこられた組織文化だと思います。
ただ、人事的な立場で言えることがあるとするなら——20年程前に策定した人材育成基本方針の中で、挑戦することを良しとする風土、自分で考えて行動する風土づくりを掲げて推進してきたんです。だからチャレンジングな組織文化が育っている。ユニークな人がユニークでい続けられるのは、そういうところにもあるかもしれないですね。

松田:以前、職員向けのアンケートで『仕事をするうえで大切にしている価値観』を聞いたところ、上位3つが、1位『市民・現場』、2位『チームワーク』、3位『仕事を楽しむ』だったんです。
私はこれ、素晴らしいなと思っていて。組織で仕事をする、いざとなったら助け合えるという風土が根付いていること。そして『仕事を楽しむ』。公務員なので明るい仕事ばかりではなく、時には大変な仕事、批判に晒される仕事もあります。そんな中でも自分なりのやりがいや意味を見出して、その仕事を自分のものにする。そういう職員が多いからこそ、『仕事を楽しむ』が上位にきていると思うんです。「これが『豊田市職員らしさ』だ」と胸を張って言いたいですね。
一過性の「楽しい」という感情ではなく、時には苦しさや調整を乗り越えたうえでの、仕事の深みや奥深さ。それが「仕事を楽しむ」という言葉に表れているのだと感じました。

ー最後に、これから市役所職員としてのキャリアのなかで、挑戦してみたいことはありますか?
松田:やはり私は「人と関わる仕事が好き」という思いはディーラー時代から変わりません。コロナ禍を経てコミュニケーションのあり方が変わり、AIの台頭で業務のあり方が変わっても、人との関わりの中で仕事をすることや、地域に入り市民の皆様のニーズを汲み取る営みは変わらないと思います。もし私がこの組織でお役に立てることがあるなら、これからの職員に、思い通りにいかないことも含めて人との関わりの中で仕事することの喜びや楽しさを、自分の成長や組織の発展に昇華してもらえるような役割を果たせたらよいなと思っています。
ーこれから豊田市役所を目指す方へ、メッセージをお願いします。
松田:豊田市役所には、本当に面白い職員がたくさんいます。市民のため、地域のため、仲間のために真剣に「仕事を楽しむ」ことに共感していただける方は、ぜひ豊田市役所を受けてもらいたい、一緒に仕事をしたいなと思います。
ー本日はありがとうございました。
画面の向こうの松田さんは、終始やわらかな笑顔で、まるで身内に話すように肩の力を抜いて言葉を紡いでくれました。落ちた試験を「落としてもらった」と語り、遠回りを人生の幅に変えてしまう——その姿勢そのものが、豊田市役所の「挑戦を良しとする風土」を体現しているように思えた取材でした。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年6月取材)
この記事の官公庁・自治体
豊田市は全国第1位の製造品出荷額等を誇る「くるまのまち」でありながら、 市域のうち約70%が森林を占める「みどりのまち」でもあります。 日本の縮図として、他都市のモデルとなる様々な挑戦を続けています。 「ミライのフツー」をつくるために一緒にチェンジ・チャレンジする職員を募集しています! ★財政力指数中核市1位★ ★中核市幸福度ランキング総合1位★ ★SDGs先進度調査全国総合1位★
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