生駒市の重層的支援体制整備事業「かさねるいこま」が目指す、誰も取り残さない支援のかたち
生駒市役所
「制度に人を当てはめるのではなく、その人に合った支援をみんなで考えていく」
そう語るのは、生駒市役所地域共生社会推進課で課長を務める上野さん。新卒で大学院を卒業後、事務職として入庁し、環境政策やシティプロモーションを担当する部署を経て、令和4年度に福祉分野へ異動しました。
今回は、公務員として働くことを考えている方に向けて、生駒市が取り組む重層的支援体制整備事業「かさねるいこま」や、福祉分野で求められる力について、たっぷりとお話を伺いました。
- 国民年金の受付から、ひきこもり支援まで。分野の狭間を拾い上げる地域共生社会推進課
- 分野の狭間を、地域全体で。「かさねるいこま」という名前に込めた思い
- 相談・地域づくり・参加支援を重ね合わせる。いこまる相談窓口とスモールステップの支援
- 立場の異なる人との連携。福祉分野に求められる調整力と、挑戦を後押しする生駒市
国民年金の受付から、ひきこもり支援まで。分野の狭間を拾い上げる地域共生社会推進課
ー上野さんはこれまで、どのようなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。所属の変遷も含めて教えてください。
上野:私は新卒で大学院を卒業してから、すぐに事務職として入庁しました。最初に配属されたのは環境政策を担当する部署で、脱炭素や再生可能エネルギーの普及などに携わり、トータルで7年間、環境関係の部署にいました。
そこからシティプロモーションを担当する部署に3年間在籍し、その後SDGs推進課という環境政策に近い部署に異動になりました。福祉部署に配属されたのは令和4年度で、福祉分野は初めてでした。当時は係長級として着任し、そこからずっと福祉の仕事を続けています。
ー現在所属されている地域共生社会推進課では、どのような業務を担当されているのでしょうか。
上野:地域共生社会推進課は、国民年金の受付から、社会福祉協議会や民生委員との連携高齢者福祉施設の管理、高齢者の生きがいづくりや交通費助成等まで幅広い業務を担っている部署です。
そして重層的支援体制整備事業のように分野の狭間をつなぐ業務や、ひきこもりの支援、孤独・孤立対策なども担当しています。

分野の狭間を、地域全体で。「かさねるいこま」という名前に込めた思い
ー重層的支援体制整備事業とは、そもそもどのような事業なのでしょうか。
上野:重層的支援体制整備事業は、制度や分野の狭間で困っている方を、地域全体で支援していく体制をつくることを目的にしています。行政の福祉制度は高齢者、障がい者、こども・子育て、生活困窮といった分野に分かれ、それぞれで専門的に発展してきました。
ですが実際の困りごとは、たとえば高齢の親とひきこもりの子どもが同じ世帯にいる「8050問題」のように、複雑化・複合化しているケースが少なくありません。
そうした課題に対して、行政や福祉関係者、地域住民、地域の民間事業者が連携し、それぞれが持つリソースを重ね合わせることで、支援を取りこぼすことなくおこなっていくというのが、この事業のテーマです。

ーその中でも「かさねるいこま」という名称を掲げていますが、生駒市ならではの特徴はあるのでしょうか。
上野:重層的支援体制整備事業自体は国が制度として定め、市町村が手を挙げて実施する形になっています。ただ、この事業名があまりにも長くて馴染みが持てなさそうだということで、親しみやすさのある「かさねるいこま」という名称にしました。
ネーミングもロゴも、すべて職員で考えたものです。福祉の異なる分野や多様な主体が重なり合い、誰一人取り残さない支援をするという思いを込めています。
ー従来の福祉行政との違いはどのような点にあるのでしょうか。
上野:これまでは分野ごとに専門性を高めて発展してきたのが日本の福祉の特徴で、それには一定の効果がありました。ただ最近は8050問題やヤングケアラーのように、1つの分野では対応しきれない事例が増えています。
そこで重層的支援体制整備事業では、分野の縦割りをなくすのではなく、狭間に誰かが手を差し伸べられる関わりしろを作っていくことで、世帯全体を支援していくという考え方を大切にしています。
既存の制度に当てはまらない方には、その方に合わせて支援をつくり込んでいく。それを関係する担当者が一緒に会議をしながら考えていくやり方が、この事業の大きな特徴だと思っています。

相談・地域づくり・参加支援を重ね合わせる。いこまる相談窓口とスモールステップの支援
ー「かさねるいこま」として、実際に取り組んでいる事業について教えてください。
上野:たとえば市内23箇所に「いこまる相談窓口」を設けています。もともと高齢の相談窓口、障がいの相談窓口というように分野ごとに窓口があったのですが、1つの総合相談窓口にするのではなく、各窓口で別の分野の相談を受けた場合も一旦受け止めて、自分たちで解決できなくても適切な支援機関につなげられるような体制を整えました。
また、窓口に来られる方だけでなく、Webやメタバース空間を使った「いこまる相談会」もおこなっていて、家にいても相談ができたり、外出が難しい方にも相談の間口を広げる取り組みをしています。NPO法人とも連携して、24時間365日匿名でチャット相談ができる環境も整えています。

ー支援者を支援する取り組みもあると伺いました。
上野:重層的支援体制整備事業は、困っている方への支援だけでなく、難しい相談を抱え込んでしまう支援者に寄り添う「支援者の支援」も大きな目的の1つです。地域共生社会推進課の中に、支援者に寄り添いながら支援方法を一緒に考える「いこまる主任推進員」という担当を配置しています。
また、事業に主に関わる8課の担当者が毎月1回集まる「重層的支援会議」もおこなっていて、各課の業務内容や大切にしている支援の視点を学び合ったり、複雑なケースの支援方法を考えてたりしています。

福祉の支援者から他の分野の事業所と顔の見える関係をつくりたいという声を受けて、「事業所のお見合い大作戦」をイベントとして形にしたこともあります。

ー今、特に力を入れている取り組みはありますか。
上野:「参加支援事業」に力を入れています。公的な制度だけでは課題を解決しきれない方がいた場合、これまでは支援が届かなくなることがありました。
参加支援事業では、たとえばひきこもり状態にある方に、いきなり就労支援の制度を使うのではなく、まずはクラフト教室のような場に参加してもらい、人や空間に慣れてもらいます。
そこから市民団体や事業所での作業を、有償無償を問わずボランティアとして手伝ってもらい、少しずつ階段を上るように就労につなげるなど、定着するまで丁寧に伴走することを大切にしています。

立場の異なる人との連携。福祉分野に求められる調整力と、挑戦を後押しする生駒市
ー福祉分野で働くうえで、必要になる能力はどのようなものだと感じていますか。
上野:私自身、福祉分野は5年目で、重層的支援体制整備事業の担当になったときは知識ゼロから始まりました。
知識は勉強すればいずれ習得できますが、それより大切なのが、さまざまな分野の専門職や事業者、市民の方と関わる機会が多いので、考え方や立場の異なる方の話をよく聞いて調整していく力だと思います。
自分たちの考えだけを押し付けるのではなく、相手が大切にしていることを汲み取りながら連携できる部分を見つけていく力が、福祉分野に限らず基本的な能力として必要だと感じています。

ー新しい発想やフットワークの軽さも求められる場面はあるのでしょうか。
上野:法律に則ってサービスを提供していくことはもちろん大切ですが、重層的支援体制整備事業ではITを活用したり、さまざまなイベントをおこなったりもしています。
ほかで見てきたものを取り込んでやってみようという前向きなチャレンジや、地域住民主体のイベントや居場所を見に行き、支援している方を受け入れてもらえないか相談してみるなど、気になるところがあればすぐに現場に出ていく姿勢が必要だと思います。

ー最後に、生駒市で働くことを考えている方へメッセージをお願いします。
上野:生駒市は新しいことにチャレンジできて、それを後押ししてもらえる環境だと思います。私自身、そうやって挑戦させてもらって今がありますので、管理職になった今は、自分が後押しができる環境をつくっていきたいと思っています。
福祉は専門的だと思われがちですが、未経験からでも、素直に知識を吸収しながら積極的にコミュニケーションを取っていくことでいろんなことに挑戦できる仕事です。前向きに取り組んでいただける方に来ていただけると、うれしいですね。

ー本日はありがとうございました。
生駒市の地域共生社会推進課が取り組む重層的支援体制整備事業「かさねるいこま」には、分野の狭間で困っている方を誰一人取り残さないための工夫が数多く詰め込まれていました。
制度に人を当てはめるのではなく、その人に合った支援をみんなで考えていくという姿勢は、福祉未経験からこの分野に異動となった上野さんの言葉だからこそ伝わってきます。
挑戦を後押しする生駒市の姿勢は、これから公務員を目指す方にも心強いメッセージになりそうです。
取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年8月取材)
この記事の官公庁・自治体
生駒市は、昭和50年代から新興住宅地の開発が続き、都心部へのアクセスの良さ、生駒山や矢田丘陵に囲まれた緑豊かな環境、定評のある子育て・教育環境の良さを活かし、大阪のベッドタウンとして発展してきました。市民の皆さんの定住意向率は87.2%と高い水準を誇ります。 主役である市民が仲間を得て、夢をかなえ、 自分らしく輝きながら暮らせるまちになることを目指しています。 このまちの未来をつくろう。いっしょに。
生駒市役所をフォローして、「新着求人の通知」を受け取りましょう!
この記事が気に入ったらお気に入り登録しましょう!
