副業で音楽フェスを企画。生駒市役所の外での挑戦と、得た経験を公務に生かす働き方。

生駒市役所

2026/10/19

「このフェスを通じて身につけたことは、今の仕事にも使える。そういうスキルを、市役所に持ち帰れるんです」

 

そう語るのは、生駒市役所 生涯学習部 生涯学習課で主幹(兼係長)を務める、入庁8年目の上田さん。

上田さんは、学生時代にシンガーソングライターとしてデビューした経験をもち、その後はイベント会社で企画運営の仕事をしてきました。市役所に入ったいまも音楽に携わる活動を続けていて、今年11月には、アラスカからもバンドを招き、音楽・食・体験が一度に楽しめる、入場無料の野外フェスティバルを市役所の業務とは別の活動として開く予定です。

 

それを後押ししているのが、職員が地域活動で報酬を得ることを認める、生駒市の「副業制度」です。今回は、この制度を使ってフェスに挑む上田さんに、市役所の外での挑戦と、その経験を市の仕事に生かす働き方について伺いました。

 


 

イベント会社を経て市役所へ。1年目のつまずきが教えてくれたこと

ーこれまでの経歴を教えてください。

 

上田:在学中にシンガーソングライターとしてプロデビューし、東京で事務所に所属し音楽活動をしていました。その後関西に戻り、今度はイベントを企画する側に回ろうと考え、イベント会社に就職しました。営業として自分から仕事を取りにいくスタイルで、ずっとイベントの世界に身を置いてきました。

 

ー生駒市役所に入庁したきっかけは何でしたか。

 

上田:実家が生駒市にあり、市の広報誌で民間企業等の経験者を求める求人を見つけたのがきっかけです。その当時、市役所でこのような中途採用の求人は珍しく、地元で働いてみようと思い応募しました。

 

ー入庁してみて、いかがでしたか。

 

上田:最初はシティプロモーションの部署に配属されました。成果を上げなければと、民間の営業のように1年目からフル回転で動いたのですが、正直言ってあまりうまくいきませんでした。予算の考え方やお金の動かし方、立案から実現までのプロセス、文章の表現ひとつとっても民間とはまったく違い、それまでのやり方がほとんど通用しなかったんです。

 

ーそこから、どのように立て直したのですか。

 

上田:戦うより先に、まず自分が基礎を知らないと発言する資格はない。半年ほどでそう気づき、本を読むなど公務員の勉強をやり直し、2年目から働き方を切り替えました。
 

 

朝は発掘調査、昼は音楽祭の準備。市民と一緒につくる文化芸術の仕事

ー現在の仕事内容を教えてください。

 

上田:文化芸術と文化財を担う係で、係長を務めています。芸術や音楽、吹奏楽の市民団体と連携するほか、文化財も担当しています。取材の日も、朝は発掘調査に行き、昼は音楽の仕事の準備をしていました。幅は広いですが、これまでの経験がしっかり生きています。

 

ー特徴的な事業はありますか。

 

上田:市民団体に音楽コンサートを企画してもらう、公募型の音楽祭です。選ばれた団体に公演の総合プロデュースを委託し、企画から運営、チケット販売まで担ってもらいます。代表は音楽の専門家ではない市民の方がほとんどで、ジャズバーの常連だった方が、ファンのピアニストを招いて公演を開くこともあります。

生駒市が大切にしている、市民と一緒に汗をかく「市民協働」の形です。市はバックアップに回り、当日の準備も一緒に行います。昨年で10周年を迎え、今年から次の10年に向けて形を変えはじめています。

 

ーどのように変えていくのですか。

 

上田:参加する団体が固定化してきているので、若い世代の発掘に取り組んでいます。子育て世代をどう取り込むかは、市役所にとっても課題です。そこで生駒山上遊園地とコラボし、Webで応募が完結する「IKOMA Sanjo Sound Picnic」という公募型のフェスのようなイベントを企画して実施しました。

 

一日通してあいにくの天気でしたが、悪天候時の入場記録が出る等効果を感じています。出演者には当日運営の役割を担ってもらう等本来の事業のスタイルも取り入れています。

すべてを否定して新しくするのではなく、“昔からの積み重ねがあるからいまがある”と若い人にも伝えながら、仕事を進めています。

出演者のサイン入りポスター
「IKOMA Sanjo Sound Picnic」の当日の様子(撮影:八幡雅也)

アラスカのバンドを招く無料フェス。副業制度を初めて申請した理由

 

ー生駒市の副業制度を利用しているそうですね。

 

上田:生駒市では、公共性のある組織や地域活動であれば、申請して副業が可能となります。これまで、自分も出演している奈良市のライブハウスで何度も自主イベントは行っていたのですが、収益は発生しないため、仕事のあとに市民バンドで演奏するのと変わりなく、人事課にも一応報告はしていましたが申請の必要はありませんでした。

ただ、今回奈良市で新たな補助金に合格し、海外のアーティストを呼んでさらに一段規模を大きくしたイベントを開くこととなりました。

 

ーどんなイベントなのですか。

 

上田: 11月3日に「nice to meet you 〜奈良を日本の入り口に〜」というフェスを開きます。夜のライブハウスは、家族連れではなかなか来づらいので、昼間に無料で楽しめるイベントを、ずっとやりたかったんです。アラスカからバンドが来てくれて、音楽を聴きながら地元のお店の料理を食べたり、物産を買ったりできる、そんなイベントです。こどもが来やすいようにアクティビティも用意し、司会もプロのお笑い芸人の方にお願いしました。今のところ、企画はすべて1人で進めています。

 

ー補助金が決まったことが、申請の決め手だったのですね。

 

上田:補助金でまとまったお金が入り、地域を巻き込むという公共性も生まれたので、副業の申請を考えました。補助金だけで全額はまかなえないので、出店料や協賛金も集めています。協賛したいという声も多く、今後は収益の出るイベントに育ちそうな予感があるので、いまのうちに申請しておきたいと思いました。

 

ー申請の手続きは、どのような流れでしたか。

 

上田:副業の申請書を提出し、担当課に内容を説明した後、職場での審査を経て、決定通知が届きます。年度ごとの更新なので、毎年申請し、収支と成果を報告することになります。

 

今回は事情もあり奈良市でのイベントとなりますが、このイベントのやり方自体は、現在の仕事にも十分使えます。副業を通して得たスキルを持ち帰れることが生駒市にとってのメリットだと思っています。

 

副業で得た経験を、市の仕事に持ち帰る

 

ー具体的に、どんなことが仕事に生きそうですか。

 

上田:今回初めて食べ物を扱うので、保健所や消防の手続きを進めています。市役所の業務の中ではあまり意識してこなかった部分なので、日々の業務に持ち帰れそうだという実感があります。これまでのベースがあるからこそ、新しいことに挑戦できる余力が生まれました。

 

ー周りの職員の反応はいかがですか。

上田:副業について職場でも話しているので、周りにも気づきがあるのかなと思います。いつそんな時間があるのかと聞かれますが、やり方次第です。所属している係は10月が繁忙期で休日出勤もあるので、フェスの準備は1年ぐらい前から少しずつ準備を進めていました。

 

ーほかにも副業をしている職員はいますか。

 

上田:同期入庁の職員は、自分で地ビールをつくっていて、現在ではとても有名になっています。私の年代は副業に取り組んでいる人が多いと聞きますね。規模は様々ですがいろんな職員がいます。

上田さんの同期がつくっている地ビール

 

ー本業と副業の両方でやりたいことを形にするうえで、大切にしていることは何ですか。

 

上田:筋を通すことです。一度失敗したからこそ思うのですが、何事にもリスペクトがないとうまくいきません。報告・連絡・相談といった基本をきちんとして、周囲を良い意味でどう味方につけるか。それさえできれば、自分のカラーは出せると思います。

 

ー生駒市役所は、どんな組織だと感じていますか。

 

上田:大きすぎず小さすぎず、職員全体の顔がなんとなく見える組織で、風通しのよさがあります。庁舎もそれほど大きくないので、ほかの部署にもすぐ会いに行けます。部署を超えてつながってやっていこうという気持ちさえあれば、実現できるという実感があります。

 

ー最後に、受験を考えている方へメッセージをお願いします。

 

上田:しっかり生駒市のことを勉強してから応募してほしいです。本気かどうかはすぐに伝わりますし、熱い思いを持っていれば、ちゃんと形にできる職場です。私も1年目につまずいたときは悩みましたが、乗り越えた先にいいことがありました。ここでしかできないことに、ぜひ挑戦してください。

 

ー本日はありがとうございました。

 

民間の経験に公務員としての基礎を重ね、仕事の内と外で地域の文化を育てる。副業を「市に持ち帰る経験」と捉える姿勢に、制度の意義が表れていました。11月のフェスの成功を楽しみにしています。

 

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年9月取材)


 

地域貢献活動を行う職員の営利企業等の従事(副業)の促進について

  生駒市では、職員の地域活動への積極的参加を促進し、公共性のある組織で副業に就きやすくするため、職員が職務外に報酬を得て地域活動に従事する際の基準(運用)を定めています。

 

 生駒市ホームページはこちら↓

 https://www.city.ikoma.lg.jp/0000010732.html

 

 

職員インタビュー

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生駒市は、昭和50年代から新興住宅地の開発が続き、都心部へのアクセスの良さ、生駒山や矢田丘陵に囲まれた緑豊かな環境、定評のある子育て・教育環境の良さを活かし、大阪のベッドタウンとして発展してきました。市民の皆さんの定住意向率は87.2%と高い水準を誇ります。 主役である市民が仲間を得て、夢をかなえ、 自分らしく輝きながら暮らせるまちになることを目指しています。 このまちの未来をつくろう。いっしょに。

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