地域の建物に、完成のその先まで寄り添う。登米市の建築技師・佐々木さんに聞く公共建築のやりがい

登米市役所

2026/10/20

「図書館や小学校のような、地元に密着した建物に、新築から使い終わるまでずっと関われる。そこに強く魅力を感じました」


 そう穏やかに語るのは、登米市役所総務部政策推進室で建築技師として働く、入庁13年目の佐々木さん。

 

 仙台市出身。大学で建築を学び、平成26年度に新卒で入庁しました。建設部住宅都市整備課で都市計画や公園の管理、景観を担当したのち、建築営繕課で公共施設の維持修繕や耐震関係の補助金業務に長く携わってきました。

 

 今年7月からは、新たに立ち上げられた(仮称)地域交流センター整備推進係で大規模プロジェクトの準備を進めています。

 

 今回は、登米市の建築技師を選んだ理由や仕事の実際、職場の環境について、たっぷりとお話を伺いました。

 


 


 

民間か、公務員か。「建てて終わり」ではない公共建築に惹かれて

ーまずは、建築を学んでいた頃のことから教えてください。


佐々木:仙台市の出身で、県内の宮城大学で建築を学びました。登米市を知ったのも、大学の講義で「みやぎの明治村」の景観地区を題材として学んだことがきっかけです。

 

ー建築を学んだ方は、どのような道に進むことが多いのでしょうか。

 

佐々木:私の大学では、アトリエ系の事務所や大手の設計事務所に進む人もいれば、建築とはまったく関係のない民間企業に就職する人もいて、本当にさまざまでした。

 

ー佐々木さんご自身は、民間と公務員で迷われましたか。

 

佐々木:就職活動では民間企業も受けつつ、公務員試験の勉強もしていました。規模の大きさでいえば、商業施設や大きなビル、開発など、民間のほうが大規模なプロジェクトを手がけられるのかもしれません。一方で、公務員は図書館や小学校のような地元に密着した建物を手がけられる。そこにより強く魅力を感じました。
 

ー住民の方が日常的に使う施設ですね。


佐々木:はい。もちろん収入の安定や福利厚生も大きかったです。それに加えて、新築だけでなく維持や修繕まで、使い終わるまでずっと同じ地域の建物に関われる。そこが公務員ならではの魅力だと感じました。
 

ー数ある自治体の中で、登米市を選んだのはなぜですか。

 

佐々木:複数の自治体を受けた中で、最終的に登米市に決めました。特別な縁や知り合いがあったわけではないのですが、大学のゼミで学んだことで親近感が湧き、働くイメージが持てたのだと思います。年数を重ねるにつれて、だんだん愛着も湧いてきました。

 

図面と積算だけじゃない。住民のお宅を毎日のように訪ねた日々

ー入庁後は、どのような部署で働いてきたのでしょうか。

 

佐々木:最初は建設部住宅都市整備課で、都市計画や都市公園の管理、景観を担当しました。3年勤めたあと建築営繕課に異動し、今年の6月まで、公共施設の維持修繕や耐震関係の補助金業務を担当していました。

 

ー公共施設の維持修繕とは、具体的にどんな仕事ですか。

 

佐々木:学校や幼稚園・保育園、公民館、庁舎、公営住宅など、公共施設にはさまざまな種類があって、それぞれ管理している部署が別にあります。

 たとえば学校なら、教育委員会が予算を持っています。建築営繕課はそうした部署から「この施設をこう改修してほしい」と依頼を受けて、まず設計を発注し、次に工事を発注し、完成したら担当部署にお返しする。これが基本的な流れです。業者さんと担当部署の仲介役のような立場ですね。

 

ー課の体制はどうなっていたのですか。

 

佐々木:課長まで含めて7名で、そのうち建築職は私を入れて3名。ほかは土木の専門職や事務職の方がいました。年度ごとに複数の依頼が来るので、それを割り振って、長ければ数年かけて担当していきます。

 

ー入庁前のイメージと比べて、いかがでしたか。

 

佐々木:図面を描いたり積算をしたりと、机に向かう作業があるのは想像通りでした。予想外だったのは、住民の方と直接お話しする機会や、自分の足で現場に出向く仕事が思ったよりずっと多かったことです。

 

ーどのような場面で住民の方と関わるのでしょう。

 

佐々木:建築営繕課では、耐震改修やブロック塀の撤去補助金も受け持っていました。問い合わせがあるたびにお宅へ伺い、制度を説明しながら現地の状況を確認して、「これなら補助を使っていただけます」「これは難しいですね」とお伝えするんです。

 忙しい時期は、ほとんど毎日のように現場に出ていました。お金が関わることなので、1回の説明ではなかなか伝わらないこともあります。書類を見せながら何度も説明して、ようやく納得していただけたこともありました。

 

図面通りにいかない現場と、子どもたちの笑顔。

ー仕事の中で、大変だったことはありますか。

 

佐々木:特に改修工事では、現場が動き出してから分かる突発的なことがたくさんあります。古い建物では、図面と実際の状態が異なっていたり、過去の改修の詳細が分からなかったりすることがあって、現場代理人の方から「設計通りにいきません」と突然相談が来るんです。そのたびに現場に行き、状態を見てどうするかをその場の全員で話し合い、図面に反映して工事を進めます。大変ですが、面白いところでもあります。

 

ー現場ならではの学びもありそうですね。

 

佐々木:施設を管理している方は、その建物を誰よりもよく知っています。直接お話しすると「実はここに苦労しているんです」という生の声を聞けて、とても勉強になります。その声をもとに当初の計画に付け加えたり、計画そのものを変えたりすることも多々あります。

 

ー印象に残っている仕事を教えてください。

 

佐々木:工事が終わると担当部署にお返しするので、完成後にお声をいただく機会は多くありません。ただ、市内の小学校を大規模改修したときは、改修後の建物を見て回る機会がありました。子どもたちが新しい校舎で遊んでいる姿を見て、先生方からも「きれいになって良かったね」と声をかけていただいて。そのときは、やって良かったなと感じました。

ー今年7月からは、新しい部署に移られたそうですね。

 

佐々木:6月末に市長から(仮称)地域交流センターを整備する方針が示され、7月に政策推進室に(仮称)地域交流センター整備推進係が新設されました。それ以前から建築営繕課との兼務で少し打ち合わせに入っていたのですが、異動の指示を受けて本格的に取り組んでいくことになりました。

 

ー今はどのような業務を担当していますか。

 

佐々木:設計は外部に委託していて、来年度の工事発注に向けて準備を進めています。大規模なプロジェクトなので、関係各所との調整がとにかく多いんです。こうした大きなプロジェクトに携わる機会はそうそうないと思うので、良い機会をいただいたと思っています。

副担当として現場を学べる安心感。市外出身でも「この市のために」と思えるまで

ー職場はどんな雰囲気ですか。


佐々木:落ち着いていながら、話しやすい雰囲気です。業務は個別に割り振られますが、一人で全部こなさなければならないわけではまったくありません。悩んだらすぐ周りに相談できますし、経験豊富な先輩方がアドバイスをくださいます。

 業者の方から急な変更の電話があったときも、まず上司に相談すれば「じゃあ現場を見に行こうか」と、すぐに一緒に来てくださいます。
 

ー新しく入った職員へのサポートはありますか。


佐々木:人事課の初任者研修のほか、宮城県など外部の団体が開く初任者向けの建築の技術講習会にも参加できます。私が入庁した当時は、同じ建設部の先輩の女性職員が、業務に限らずいろいろな悩みを聞いてくださいました。
 

ー民間と比べて、働き方の面ではいかがでしょう。

 

佐々木:市役所は福利厚生が特徴で、介護休暇や育児休暇、女性特有の休暇など休暇制度が充実しています。急な体調不良で休むときも周りが受け入れてくださるので、働きやすい職場だと思います。

 

ー最後に、登米市の建築技師を目指す方へメッセージをお願いします。

 

佐々木:私は登米市の出身ではありませんが、今は市外から来た職員もだいぶ増えています。周りの皆さんはとても親切で、仕事のこともプライベートのちょっとした相談も話しやすい職場です。そうした中で少しずつ地域への愛着が湧いて、この市のために頑張ろうという前向きな気持ちになりました。市内・市外を問わず、安心して来ていただけると思います。

 また、私も大学を卒業してすぐ、右も左も分からないまま飛び込みました。実務や現場の経験がなくても、最初は先輩の現場に副担当として入り、仕事の一連の流れを教えていただけます。初めての方も怖がらずに、安心して入ってきていただきたいです。

ー本日はありがとうございました。

 

 登米市で、地域の建物と長く付き合える仕事を選んだ佐々木さん。住民のお宅を何度も訪ね、図面にない改修跡にも上司と現場で向き合ってきたお話から、登米市の建築技師ならではのやりがいが伝わってきました。

 

 市外出身でも、経験がなくても、先輩の現場で一から学べる環境があること。民間か公務員かで迷っている方にこそ、登米市という選択肢を知ってほしいと感じる取材でした。

 

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年9月取材)

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宮城県北部にある登米市は、自然も歴史もグルメも楽しめる、ちょっと自慢したくなるところ。「みやぎの明治村」として知られるレトロな建物や、四季折々の美しい景色が広がり、のんびりとした空気が流れています。そして、日本有数の米どころとして、おいしいお米や特産品もいっぱい! そんな登米市で、私たちと一緒に地域の未来をつくってみませんか?「人と地域がつながる仕事」に挑戦したい方、大歓迎です。

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