「中途半端な覚悟ではできない」。人が逃げる場所へ、逆に向かう仕事

前橋市役所

2026/10/14

「人が逃げる場所に、逆に向かうような職業である消防職に就きたい」

 

そう語るのは、前橋市消防局総務課総務係の関真吾さん。県外の大学を卒業後、地元・前橋市の消防局に入職し、今年で15年目になります。

 

東・西消防署では消防隊員として火災や救助などの現場に立ち、その後は試験を経て中央消防署の高度救助隊へ。現在は現場を離れ、職員採用の事務や消防局のInstagramの撮影・編集を担っています。

人が逃げる場所へ向かう現場から、未来の消防職員を迎える採用・広報まで。

15年間で経験してきた仕事を通して、「誰かのために働く」という消防職の幅広い業務について伺いました。

 


就職活動で決めた覚悟。人が逃げる場所へ、逆に向かう職業を選ぶ

―まずは、これまでのご経歴を教えていただけますか。

 

関: 前橋市内の高校を卒業した後、関東圏内の大学に進学しました。そこで就職活動をしている中で、公務員、消防士を目指すようになりました。卒業後は、前橋市消防局に入職して、今年15年目になります。

 

―消防士を目指されたのは、いつ頃だったのでしょうか。

 

関: 具体的に目指したのは就職活動からですね。その前から、働く仕事の一つとして消防職は頭にありました。

 

就職活動が始まって、民間も含めていろいろな仕事を見る中でも、やっぱり消防職がいいなという思いが抜けなくて。

 

職業柄、命に関わる仕事なので、中途半端な覚悟ではできないなというのがありました。その覚悟を決めて仕事をしたい。人の命に関わったり、人が逃げる場所に逆に向かったりする消防職に就きたいと具体的に決めたのは、就職活動のときですね。

 

―「覚悟を決めて働ける仕事がいい」と思われた背景は何でしょうか。

 

関: 純粋に、私の性格だと思います。無駄に責任感が強いと言うとあれですけど(笑)普段誰かと会話するときも、「私と会話して楽しかったな」と少しでも思っていただけるように、コミュニケーションは日頃から取っていきたいという、変なこだわりがあるんです。

 

おせっかいじゃないですけど、私と関わる人が、生きている中で少しでもプラスになってくれればいいなという思いがあります。

 

火を消す隊、救助する隊。試験を受けて、市内全域に出動する高度救助隊へ

―最初の配属は東消防署の消防隊ですね。どんな業務でしたか。

 

関: 災害対応で言うと、火災出動がメインです。

 

私が配属された当時の東消防署は、消防隊が救助隊を兼務していました。救助出動のときには、救助工作車という専用の車に乗り換えて出動します。あとは救急隊の支援です。救急隊は普段3人なので、重症の患者さんを建物から搬出するときなど、消防隊のマンパワーが必要になる場合があります。

 

危険物が漏えいしたときの対応や、水害時の水防活動、立入検査など、現場以外にも幅広い仕事がありますね。

 

―前橋市消防局には、どのような隊があるのでしょうか。

 

関: 大きく分けると、現場を指揮する指揮隊、水やホースを積んで火を消す消防隊、救急車に乗る救急隊、それから救助隊があります。救助隊はすべての消防署にあるわけではなく、前橋市では東消防署、西消防署、中央消防署にあります。

 

その3隊のうち、中央消防署にあるのが救助を専門とする高度救助隊です。高度救助隊は、試験を受けて合格しないと配属されない隊になります。

 

―その後、中央消防署の高度救助隊へ。消防隊とはどう違いましたか。

 

関: 乗っている車は赤い消防車なので、一見すると同じように見えるんですけど、高度救助隊が乗る救助工作車には、水やホースではなく救助のための資機材が積まれています。消防隊の一番の任務が水で火を消すことだとすれば、救助隊は、救助事案で人を救助することが一番の任務です。そこが大きな違いですね。

 

もう一つ違うのが、出動する範囲です。消防隊は基本的に、それぞれの消防署が管轄する区域を中心に出動します。一方で高度救助隊は、前橋市内で起きた特定の火災や救助事案には、ほぼ全域に出動します。

 

―高度救助隊は、いつ頃から希望されていたのでしょうか。

 

関: 入ったときからですかね。

消防士になりたいと思った理由の一つが「命に関わる仕事がしたい」ということだったので、一番現場に行く可能性が高いのが高度救助隊かなと思っていました。前橋市全域に出動して、命を助けるような事案に携わる機会も多い。だから、入ったときから希望していました。

 

高度救助隊の試験自体は、なりたい職員であれば何年目からでも受けられます。

埼玉から自転車で来た中学生。現場を離れても、人のためにできること

 

―その後、総務課の企画係に異動されています。

 

関: 前橋市消防団の仕事をサポートする係でした。新しく入っていただいた方に活動服をお配りしたり、出動報酬や退職報償金をお支払いしたりといった事務です。

あとは広報事業ですね。コロナ禍だったので、SNSを活用して広報しようと、消防団のInstagramを始めました。

 

―現在の総務係では、どのようなお仕事をされていますか。

 

関: まずは職員採用の事務です。2次試験の面接の運営など、採用全般に関わっています。

あとは消防局のInstagramですね。動画の撮影から編集まで、全般を私一人で担当しています。消防局をPRして、優秀な方が前橋市消防局に入ってくれればという願いを込めてやらせていただいています。

 

―投稿づくりでは、どんなことを意識されていますか。

 

関: 一番根底にあるのは、「風通しがいい職場だな」と思っていただきたいということです。

消防は、公安職ということもあって硬いイメージを持たれている方も多いと思います。だから、なるべく人間らしさをアピールしたいんです。あとは、市民の方に親しみやすさを感じてもらうことですね。

 

内側にいるから分かるのかもしれませんが、前橋消防にはすごくフランクな職員がいっぱいいます。上司とも最低限の礼儀は保ちつつ、分け隔てなく相談できる。そういうチームワークが、前橋消防らしさなのかなと思っていますし、それをInstagramで知ってもらえたらと考えています。

 

―Instagramを担当されていて、印象に残っている出来事はありますか。

 

関: 消防署には以前から、市民の方が見学に来てくださることがあるんですけど、その中に、埼玉から自転車で来てくれた中学生がいたらしいんですよね。中央消防署の職員が「なんで埼玉から来たの?」と聞いたら、「前橋市消防局のInstagramを見て、将来ここに入りたいと思ったので、自転車で来ました」と。

 

それを聞いたときは、やっていて良かったなと思いました。

 

―現場で印象に残っている出来事もありますか。

 

関: 救急隊に配属されたことはないんですけど、当番によって救急車に乗ることがあったんです。

搬送した患者さんが、後日消防署まで「あのときはありがとうございました」とお礼をしに来てくださったことがありました。そうやって直接言葉をいただけるのは、嬉しい経験でしたね。

 

―2年前の能登半島地震にも出動されたと伺いました。

 

関: 発災してすぐ、第一次派遣隊で行かせていただきました。いろいろな役割の隊が出動する中で、私は後方支援隊でした。現場で活動する隊員たちも、休まないと活動を続けられません。そこで、テントや寝袋を持っていって、隊員が休める宿営拠点を作るのが後方支援隊の役割です。現地は地震の影響で道路やライフラインに被害が出ていて、特に道路は亀裂が入り、1車線しか通れない場所もありました。

 

消防車が何台も通るので、私はそこで交通整理をしていたんです。雨の中、2、3時間くらいだったと思います。

地元の方もずっと通れずに待ってくださっていたんですが、その中の方から「長い時間ありがとうございます。よければこの傘使ってください」と声をかけていただきました。

 

居住地の方が被災して大変なのに、他県から来た私のことを思ってくださる。その優しさにすごく感動して、「何でもいいから役に立ちたい」と思った、印象的な場面でした。

―前橋市消防局で働いていて良かったと感じるのは、どんなときですか。

 

関: まずは地元なので、地元に貢献できることがどれだけ贅沢なことかというところですね。地元の人と触れ合えるのは、前橋市消防局で働いていて良かったと思う一番の部分です。前橋には赤城山があって自然もあり、まちもある。いろいろな災害への備えや対応を学ぶことができると思います。

 

あとは、やっぱり人に恵まれています。知識や技術が高い職員が多く、職員の層が厚いと感じますし、何かあったときに支えてくれる職員が、先輩後輩関係なく大勢います。

 

―入職15年目の今、消防に対する想いは当時のままですか。

 

関: 命に関わる仕事がしたいというところは、根底にあります。

今は現場に出ない部署にいますが、何かしらの形で市民のみなさんのためになることをしていきたいという気持ちは変わらないですね。

 

Instagramも、県内外を問わずいろいろな方に見ていただいて、「前橋消防ってこういうところなんだ」と知っていただくだけでもいいと思っています。最終的には、全国にいろいろな消防局がある中で、「前橋市はこれだ」と、すぐ分かっていただけるような存在になればいいなと思っています。

消防士になった後も、道は一つじゃない。1年目から始まるキャリア

―入職して最初の1年は、どのように一人前になっていくのでしょうか。

 

関: 前橋には指導員制度というものがあって、新しく入った職員一人につき、指導員が一人つきます。

同じ隊の先輩が指導員として付いて、仕事のことから出動のことまで、基礎から教えてくれます。

困ったことがあったら教えてくれる先輩がいるので、最初の不安を取り除けるポイントなのかなと思います。

 

―消防学校には、入職後すぐに入るのでしょうか。

 

関: 現在の前橋消防は、1年目ではなく2年目に消防学校へ行きます。消防本部によっては、1年目に消防学校へ行くところも多いと思います。私自身が入職したときも、1年目に行っていました。今はまず1年目に、指導員制度の中で現場の実情も踏まえながら基礎を学び、そのうえで2年目に消防学校へ行く流れです。

 

―入職後は、どんなキャリアの広がり方がありますか。

 

関: いくつかあります。まず、救急を専門にやりたい人ですね。救急救命士の国家資格を取ってから入職する職員もいますが、消防に入ってから救急救命士を目指す職員もいます。火災を未然に防ぐ分野もあります。住宅用火災警報器の普及活動や、規模の大きな建築物の消防用設備などに関わる業務や、火災を起こさないための火災予防の啓発事業などですね。

 

あとは119番の通報を受ける通信指令の仕事。最近だとドローンの操縦士も増えています。ドローンは特定の隊だけではなく、操縦士としての教育を受けて許可を得れば、どの隊にいても操縦することができます。いずれも、まずは現場を経験してから進んでいくキャリアになります。

 

―消防に入ってから救急救命士を目指す場合、費用面での支援はありますか。

 

関:救急救命士資格の取得に必要となる経費はすべて公費での対応となっています。救急救命士を持たずに入職しても、いろいろな現場を経験してから救命士の道を目指すという職員もいます。

―最後に、「誰かのために働きたい」と考えている方へメッセージをお願いします。

 

関: 消防職員は、市民の方の日常生活に一番近い仕事の一つなのかなと思っています。「もしものときに活躍する仕事」というイメージがあるかもしれません。

 

もちろん火災や救急、災害への対応はありますが、それだけではなくて、日常生活の中から、「平時からの備えや知識が、命を守ることにつながります」と伝える啓発も、消防職員だからこそ説得力を持ってできることだと思います。市民の方と触れ合い、コミュニケーションを取りながら、災害以外の場面でも地域の安全安心を支えられる。そういうところも、消防のいいところなのかなと思っています。

 

―本日はありがとうございました。

 

人が逃げる場所に、逆に向かう。その覚悟で消防職を選んだ関さんは、15年目の今、採用とInstagramを通して前橋消防を伝えています。向かう先は変わっても、「誰かのために」という一点は変わっていません。

「誰かのために働きたい」。その気持ちに、どんな形があるのか。前橋市消防局には、それを試せる場所がいくつも用意されています。

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年9月取材)

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『めぶく。−良いものが育つまち(Where good things grow.)−』 『新しい価値の創造都市・前橋』を将来都市像に位置付け、「市民一人ひとりが個性と能力を生かし、個々に輝くことにより新しい前橋らしさを創造するまち」を目指すまちの姿とし、子育てや福祉、環境、産業など、さまざまな分野で市民の暮らしを支える取り組みを進めています。 ー自然と都市が調和する前橋は、日々の暮らしを楽しみながら、自分らしい挑戦ができるまちですー

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