消防一択ではない。病院で働く「救急救命士」の大きな魅力

中東遠総合医療センター

2026/08/16

「救急救命士として働くなら、消防士になる」そう思い込んでいませんか?救急救命士の資格を持ち、救命のプロフェッショナルを目指したい方にこそ知ってほしい道があります。それが「病院救命士」というフィールドです。

静岡県掛川市と袋井市が共同で設立した3次救急医療の要、中東遠総合医療センターで活躍する竹嶋さん。かつて消防を志すも叶わず、2次救急病院を経てこの場所にたどり着きました。そこで見つけたのは、「救急医療の最前線に100%立ち続けられる」という圧倒的なやりがいでした。救急車での患者搬送、ドクターカーでの現場出動、そして救急外来での医師や看護師とのチーム医療。救急救命士としての可能性を広げ続ける竹嶋さんの言葉から、病院というフィールドを選択する理由を探ります。

 


救急医療の最前線。病院で働く救命士のリアルとは

ーまずは竹嶋さんの現在の所属や、中東遠総合医療センターの中での役割について教えてください。

 

竹嶋:よろしくお願いいたします!私は現在、救急救命士として、中東遠総合医療センターの「救急科」という部署に所属しています。

 

病院での患者対応というと「看護部」をイメージされる方も多いかもしれませんが、私たち救命士は医局と同じ「救急科」に属しています。上司も救急科の医師になりますので、看護とは少し異なった立場で勤務しています。

 

ーまさに「救急」の専門部署ということですね。具体的にはどのような対応をしているのでしょうか?

 

竹嶋:業務は大きく「院内救急」と「院外救急」に分かれます。

 

院内救急では、救急外来に搬送されてきた患者さんの対応を行っています。カルテの記録作成や画像の検査出し、各種検査の案内、さらには処置時の補助や処方された薬剤の準備など、救急外来がスムーズに回るためのサポート全般を担当しています。

ーでは「院外救急」とはどういったことを行うのでしょう?

 

竹嶋:当院では病院独自の救急車を所有しておりまして、病院間の転院搬送などを自分たちで実施しています。その際は救命士2名体制で乗車し、必要に応じて緊急走行で患者さんを搬送します。

 

また、重症患者さんのもとへ医師や看護師を乗せて急行するドクターカーの運用も行っており、救命士がドライバー兼医療機器担当として1名、活動調整員として1名の計2名体制で出動しています。

 

プレホスピタル(病院到着前の救急現場)に近い臨場感のある現場を経験できるのは、救急車やドクターカーも運用している当院ならではの強みだと感じています。

 

ー現場に出ていくというのは非常にアクティブですね。勤務スケジュールやチーム体制はどのように組まれているのですか?

 

竹嶋:現在、当院には6名の病院救命士が在籍しています。基本的には平日の日勤帯(8時15分から17時00分)での勤務がメインとなります。土日祝日に関しては交代で1名ずつ勤務に入り、平日に振替休日を取得する形をとっています。

 

また、年末年始や救急搬送が増加する時期には、一時的に11時00分から19時45分までの遅番シフトを設定して対応しています。

 

現在は夜勤帯の勤務は行っておりませんが、救命士の増員に伴い、将来的には夜勤を含め24時間体制で救命士が勤務することも視野に入れ、準備を進めているところです。

 

より高度な医療機関へ。挑戦の場を求めた転職の舞台裏

ーそもそも竹嶋さんが救急救命士という職種を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?

 

竹嶋:高校生の時に自分の進路をいろいろと調べている中で、偶然「救急救命士」という資格があることを知りました。素直に「命を救う姿がかっこいい!」と憧れを抱いたのが全ての始まりでしたね。

 

その後、救命士の資格が取得できる大学に進学し、本格的に勉強を始めました。

ー救急救命士といえば消防のイメージですが、竹嶋さんも消防を目指していたのですか?

 

竹嶋:そのとおりです。正確には消防士になりたかったというよりも、救命士の資格を最大限活かす職業として、消防以外の選択肢が思いつかなかったんです。

 

残念ながら当時受験していた消防の採用試験には合格することができず、途方に暮れてしまうような時期もありました。ただ、救命士の資格を活かして働きたいという想いは強かったので、第2の選択として病院への就職について調べました。

 

ー病院救命士の求人は、すぐに見つけることはできたのでしょうか?

 

竹嶋:今から7年ほど前のお話になりますが、当時はまだ静岡県内で救命士を採用している病院が非常に少なかったです。地元でもある静岡県内で働きたいと考えていた私にとって選択の余地はほとんどありませんでした。

 

たまたま沼津市にある2次救急病院が募集を出しているのを見つけ、「とにかく現場で働こう」と決意し、そのまま入職することとしました。前の病院では約5年間勤務をしていました。

 

ーその後、なぜ中東遠総合医療センターへの転職を考えたのですか?

 

竹嶋:前職の2次救急病院も非常にやりがいはあったのですが、業務の幅としては院内救急のみに限られていました。現場で患者を助けたいという思いも強く、消防に再度チャレンジするという選択肢も考えていたのですが、経験を重ねるにつれて、他の高度医療機関では救命士がドクターカーや救急車に乗車して活躍している例もあるということを知りました。

 

「自分ももっと幅広いフィールドで活躍したい」と考えていたころ、3次救急である中東遠総合医療センターで救命士の募集があることを知り、迷わず挑戦を決意しました。

 

現場での葛藤と進化。「救命士」として広がる可能性

ー3次救急である中東遠総合医療センターに移られて、やはり変化は大きかったのですか?

 

竹嶋:搬送されてくる患者さんの重症度も、救急の対応件数も大きく変わりましたね!当院は年間約7,000台もの救急車を受け入れており、多い日には1日で20台以上の救急車がやってきます。

 

さらに、念願だったドクターカーでの現場出動や救急車での転院搬送など、自分が求めていた「救急」の現場がここにはありました。今振り返っても、本当に転職して良かったと心から感じています。

ーそれはよかったです!一方で、「病院救命士」という立場だからこそ直面する難しさもあるのでしょうか?

 

竹嶋:おっしゃる通りです。医療現場において「救急救命士はどこまですべきか」というタスクシフトやタスクシェアの境界線は、当院に限らず難しい課題となっています。

 

病院で救命士が働くこととなったのはまだまだ最近のことです。病院内では看護師が長年築いてきた業務フローがありますので、救命士としてできる行為であっても、現状はその多くが看護師の業務となっています。

 

ー本来はもっとできるのに、という葛藤があるのでしょうか。

 

竹嶋:そうですね。現在も院内で救命士が行える処置には一定の制限があるので、消防と比べるとできることは少ないと感じています。

 

ですが、医療行為を行うだけが救急対応ではありません。看護師長や現場スタッフと何度も話し合いを重ねながら、「カルテの記録作成」「画像の検査案内」「各種処置の事前準備」などを救命士が引き受けることで、看護師が本来のケアに集中できる体制を作り上げています。少しずつですが、院内での認知度と信頼は高くなっているという実感がありますね。

 

ー今後は救命士ができる処置や役割も変わっていくのでしょうか?

 

竹嶋:はい!当院の救命救急センター長は非常に理解のある方で、「救命士の職域を広げていこう」と背中を押してくださっています。

 

当院も、実は救命士の採用を始めてから3年しか経過しておらず、病院救命士としての働き方はまだまだ発展途上なんです。現在も救命士が院内で特定行為(医師の指示の下で行う一定の医療行為)をできるような環境整備を進めているなど、救命士としての働き方を変えるための具体的な議論が始まっています。

 

ー立ち上げ期だからこその面白さもありそうですね。

 

竹嶋:まさにそこが一番の魅力かもしれません。すでに完成された組織に入るのではなく、ルールや業務マニュアルを自分たちの手で作り上げていく段階なんです。現在在籍している6名のメンバーも、救命士養成学校を卒業してすぐ入職したメンバーや、消防から転職してきたメンバーなど、多様なバックグラウンドを持っています。

 

それぞれの知見を持ち寄りながら救命士の未来を模索していけるのは、今の中東遠総合医療センターだからこそ味わえる最高の体験だと思います。これから先が本当に楽しみです。

 

若いエネルギーと風通しの良さ。チームでつくる医療の現場

ー中東遠総合医療センターの救急科における、職場全体の雰囲気やチームワークについて教えてください。

 

竹嶋:一言で言えば、非常に雰囲気が良く、風通しが良い職場です(笑)

 

病院全体で見てもスタッフの平均年齢が30代後半と若いのですが、私たち救命士チームは20代を中心としたさらに若いメンバーで構成されています。年齢が近いこともあり、お互いに何でも気軽に相談できるアットホームな環境ですね。

 

ー医師や看護師など、職種の垣根を超えたコミュニケーションもあるのでしょうか?

 

竹嶋:当然、命がかかわる緊急の処置中などは現場がピリッと引き締まる瞬間もあります。ですが、普段の雰囲気は本当に和やかです。救命救急センター長をはじめとする医師の先生方も非常に気さくで、私たちが何か提案をすると、真剣に耳を傾けてくださいます。

 

救命士と看護師の間でも活発にコミュニケーションがとられているので、チーム全体で救急外来を支えている一体感があります。

「消防の滑り止め」ではない。病院救命士という誇り高き選択肢

ー竹嶋さんご自身、一度は消防を目指した経験を踏まえて、現在の「病院救命士」という働き方をどのように捉えていますか?

 

竹嶋:先程もお話しした通り、前職で働いていた時は、どこかで「いつかまた消防の試験を受け直そうか」という迷いが胸の奥に残っていました。ですが、当院に来てからというもの、その考えは完全になくなりました。

 

病院に搬送されて来た患者さんの院内対応、救急車やドクターカーでのプレホスピタル対応など、私が求めていた救急医療をここで全て実現することができ、さらに救命士としての新しい働き方まで考えることができるんです。

 

ー救急医療だけに特化してキャリアを積み上げたい人にとって、この上ない環境なのですね。

 

竹嶋:そのとおりです。だからこそ、これから救急救命士を目指す学生さんや若手の方々には、「消防に落ちたから仕方なく病院に行く」というネガティブな意識を捨ててほしいと思っています。「救急医療のプロになるための第一選択肢として病院救命士になる」というマインドが、もっと当たり前になってほしいですね。

 

ー最後に、全国の救急救命士を目指す皆さんへメッセージをお願いいたします!

 

竹嶋:病院救命士は、まだまだ歴史が新しく、可能性に満ちあふれた素晴らしい職業です。中東遠総合医療センターには、ドクターカーでの現場出動から院内での救急処置補助まで、救命士としての能力を最大限に発揮できるフィールドが整っています。

 

若いチームで風通しも良く、皆さんの挑戦を温かく受け止めてくれる仲間や医師、看護師がたくさんいます。

救急という仕事に対し情熱を持った方と、一緒に働ける日を楽しみに待っています!

ー本日はありがとうございました。

 

竹嶋さんが最後に語っていた「救急医療のプロになるための第一選択肢として病院救命士になる」という言葉には、信念と誇りを感じました。消防の採用試験に落ちた悔しさを糧に、病院という新たな舞台で救命士としての在り方を証明している竹嶋さん。その力強い眼差しの奥には、単なる職種へのこだわりを超えた、命に向き合う一人の医療従事者としての情熱が宿っていました。若き救命士たちが切磋琢磨しながら新しい働き方を創り上げていく中東遠総合医療センターは、いずれ竹嶋さんが期待するような「救命士が第一志望とするフィールド」になるのだろうと思わせてくれるような取材でした。

 

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年7月取材)

 

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当院では患者さまに高度な医療を提供するために、専門の医療スタッフが一丸となって活動しています。 さまざまな場面において多職種協働によるチーム医療を展開し、チームの意思疎通を図るためのカンファレンスやラウンドなども積極的に行っています。 また、患者中心の医療を目指して、スタッフだけでなく患者さまやご家族もチームに参画できるようコミュニケーションを大切にしています。 医療に関わるすべてのスタッフが職種の強みを存分に発揮し、患者中心の理想的なチーム医療を目指しています。 医療のプロフェッショナルとして、ともに高みを目指す、そんなみなさんをお待ちしています。

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