壱岐に生まれ、壱岐で働く。20年を超えて携わる建築職のキャリア

壱岐市役所

2026/09/01

「図面を読み解く力が、市役所の仕事に生きている」

 

そう語るのは、壱岐市社会基盤部建設課で課長補佐を務める中嶋貴史さんです。大学卒業後、福岡の建築コンサルタントで4年間の実務経験を積んだのち、平成17年度に壱岐市役所に入庁し、以来20年以上にわたって建築職一筋でキャリアを重ねてきました。

 

今回は、島の建築行政を支えてきた歩みと、この仕事ならではのやりがいについて、たっぷりとお話を伺いました。

 

 

 

 


 

就職氷河期を経て歩んだ建築の道。「たまたま」重なった、壱岐へ戻るタイミング

 

ーまずは、中嶋さんの簡単な経歴からお聞かせいただけますか。

 

中嶋:出身は長崎県壱岐市です。地元の高校を卒業したあと、福岡にある大学の建築学科に進みました。卒業後は、そのまま福岡市内の建築コンサルタントに就職しました。

 

 

ー福岡の建築コンサルタントでは、どのようなお仕事をされていたんですか。

 

中嶋:建築設計の積算業務と、区画整理などに伴う補償業務をする会社でした。積算では、ゼネコン等から届く設計図面をもとに数量を拾い、工事費を算出する業務を約2年間担当しました。

 

その後は、土地区画整理事業で立ち退きが必要な家屋の図面をCADで起こし、資産価値を算定する補償業務も2年ほど担当しました。当時は就職氷河期で、就職活動は大変苦労しましたが、この4年間で図面を読み解く力と、CADで図面を作成するスキルを身につけることができました。

 

 

ー4年間の民間経験を経て壱岐市役所に入庁されるまでには、どのような経緯があったんですか。

 

中嶋:正直に言うと、たまたまだったんです。平成16年に壱岐が市制施行により1つの市になったタイミングで、それまで長崎県が担っていた建築行政の一部を市が独自に担うことになり、建築職の募集が始まりました。実家からその連絡を受けて、受けてみようかという気持ちになったんです。

 

いずれは地元に戻りたいという気持ちはあったんですが、具体的なタイミングは全く考えていなかったので、本当に偶然が重なった形です。

 

 

ー民間企業での経験は、壱岐市役所に入ってからどのように活きていると感じますか。

 

中嶋:公共建築工事の発注者という立場になると、設計図や設計書を確認する場面が数多くあります。前職で培った経験は、行政の仕事でもそのまま活かせていますし、周りの先輩方に公務員としての仕事の進め方を丁寧に教えてもらいながら、少しずつ視野を広げることができました。

 

学校の新築から日々の改修まで。「形になる」瞬間に感じるやりがい

 

ー現在は、どのようなお仕事を担当されているんですか。

 

中嶋:建設課が所管する施設だけでなく、他部署が所管する小中学校や児童福祉施設などといった公共施設の修繕・改修についても、施設整備の依頼を受けて対応しています。公共施設の修繕や改修工事を発注するために、現地測量して設計図・設計書の作成が、業務の中心です。

 

 

ーこれまで携わってきた仕事の中で、印象に残っているものはありますか。

 

中嶋:8、9年前に携わった小中学校の新築工事は、特に印象に残っています。教育委員会からの要望をもとに、外注先の設計事務所とやり取りを重ねながら形にしていきました。新築工事の図面や設計書の内容を確認するために、日々残業することもありましたが、自分自身は民間時代に新築の設計経験がなかったので、設計事務所の方々とのやり取りを通じて学ぶことも多かったですね。

 

 

ー新築以外の、日々の業務ではどのような手応えを感じますか。

 

中嶋:最近は新築よりも、既存施設の修繕や改修、解体が中心になっています。派手さはありませんが、改修で間取りを変更したことや設備を更新したことで使い勝手が良くなったと施設利用者の方から声をかけていただけると、やってよかったと感じます。

 

 

ー壱岐という島ならではの、建築の面白さのようなものはありますか。

 

中嶋:都市部に比べると、面積や高さの規制がそれほど厳しくないので、設計の自由度は高いと思います。もちろん予算の制約はありますが、都会よりも挑戦しやすい環境だと感じています。一方で、発注者は壱岐市ですから「島の景観になじむ建物にしてください」と設計事務所にはお願いするようにしています。

 

 

ー規模の大きな都市とは違う、壱岐だからこそ感じる仕事の魅力はありますか。

 

中嶋:自分が生まれ育った島の施設に携われることは、大きなやりがいです。関わった建物が長く地域で使われていく姿を、自分の暮らす場所で見届けられるのは、壱岐で働くからこそだと思っています。

 

 

現場と決裁、両方を担う立場に。頼られる存在としての手応え

 

ー係長、課長補佐と役職が上がる中で、求められる役割はどう変わりましたか。

 

中嶋:以前は自分が作成した設計図や設計書を上司が確認し、決裁を得るという流れでした。今は自分自身が現場から決裁まで一貫して携わる立場になり、島内の施設整備に主体的に関わることができるようになったと感じています。

 

 

ー次の世代への技術継承という点では、どのようなことを考えていますか。

 

中嶋:本来であれば、幅広い年代で技術職員がいるような体制が理想だと思っています。現時点では技術職員が不足していますが、次の世代にしっかりと技術を引き継いでいけるような環境を、私自身が率先して少しずつでも作っていきたいですね。

 

 

ーそうして長く一つの分野に携わってこられて、感じることはありますか。

 

中嶋:小中学校から児童福祉施設まで、幅広い施設を担当してきたので、色々な部署の方に顔を覚えていただき、気兼ねなく声をかけていただけるのはありがたいですね。これまで積み重ねてきた専門知識を活かして頼りにしてもらえているという実感もあります。

 

 

技術職にこだわらない。次の世代へ伝えたい、壱岐で働く意味

 

ー今年度、組織の名称が「建設部」から「社会基盤部」に変わったとのことですが、その背景をどう捉えていますか。

 

中嶋:これからは新築を増やしていくのではなく、今ある施設やインフラを整備していくという考え方への転換だと理解しています。人口が減少する中で、老朽化した施設をどのように改修し、利活用できるのかが、私が所属している社会基盤部に求められている命題だと捉えています。

 

 

ー後輩や若手の職員との関わり方で、意識されていることはありますか。

 

中嶋:同じ班でなくても、隣の班の後輩にはできるだけ声をかけるようにしていますし、話しやすい雰囲気づくりを心がけています。冗談を交えるときも、相手の状況に気を配って接するようにしていますね。

 

 

ー技術職以外の経歴を持つ方が、建築の仕事で活躍されている例はありますか。

 

中嶋:実際に、他の市町では事務職員が建築職に異動されることもあると聞いています。建築の分野に興味を持ち、資格の取得を目指したい方は前職の経験に関係なく、意欲があれば挑戦できる土壌があると思っています。

 

 

ーこれから壱岐市役所を志望する方へ、メッセージをお願いします。

 

中嶋:建築職に限らず、設計や現場の測量など、少しでも興味がある方は、気軽に応募していただけたらと思います。最初から大きな仕事を任せることはありませんし、もちろん丁寧に教えていきます。建築職にこだわらず、事務職の方でも経験を積んでいけば活躍できる場面はあると思っています。自分が生まれ育った壱岐のために働きたいという方には、ぜひ挑戦してほしいです。

中嶋さんが校舎建替事業を担当した中学校

 

ー本日はありがとうございました。

 

中嶋さんの言葉からは、生まれ育った壱岐で建築の仕事に向き合い続けてきた実直さと、島への思いが伝わってきました。都市部にはない設計の自由度、そして地域の人々から頼りにされる存在としての誇りが感じられます。壱岐という島だからこそ味わえる建築職の魅力が、随所ににじむインタビューでした。

 

 

取材・文:パブリックコネクト編集部(2026年8月取材)

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九州北部の玄界灘に浮かぶ南北17㎞、東西15㎞の島・壱岐。 島内の最高峰「岳ノ辻」は標高約213mで、なだらかな広がりを見せる平坦な島です。 壱岐島は、九州最大都市福岡から高速船でわずか65分に位置し、歴史は古く、魏志倭人伝には「一大國(一支國)」と記され、大陸と九州を繋ぐ交易、文化の重要な拠点として栄え、平成27年4月に対馬・五島とともに「国境の島~古代からの架け橋」として、日本遺産第1号の認定を受けています。 また、農漁業の第1次産業が盛んな地域であり、麦焼酎発祥の地としても知られる壱岐焼酎、ウニ・アワビ・イカ・ブリ、マグロなどの海産物、壱岐牛・アスパラガスなどの全国に知られた農産物など多くの特産品があります。 さらには、海水浴場百選に選ばれた透明度の高いビーチや猿岩をはじめとする数多くの景勝地、そして、月読神社や小島神社をはじめ島内には1,000を超える大小の神社や祠が存在し、魅力的な観光資源に溢れています。

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