官公庁・自治体で働くならパブリックコネクト
会員登録
ホーム
特集
【行政DX】ひとに寄り添うDXで、まちの「当たり前」をアップデートした職員たち
【行政DX】ひとに寄り添うDXで、まちの「当たり前」をアップデートした職員たち
Public Connect
2026/05/21
役所の手続きに対して、「どうしてこんなに時間がかかるんだろう」「もっと楽になればいいのに」……そんな風に、溜め息をついたことはありませんか?
そんな“不便な当たり前”を、自分たちの手で軽やかにアップデートしようとしている職員たちがいます。
彼らにとって、行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)はただITを導入することではありません。その本質は、テクノロジーを使って住民が感じる「行政のUX(ユーザー体験)」を、よりスムーズで、時には温かいものへと塗り替えること。
現場で感じた「違和感」を原動力に、まちを、そして組織をアップデートした3つの自治体の職員たちをご紹介します。
【Case 3:周防大島町】ITを導入して終わりじゃない。誰一人取り残さない、伴走型DX
「10年以上続いた不便さに、周囲は慣れてしまっていた。でも、その違和感を大切にしたかった」 (釧路市役所 三橋さん)
釧路市の三橋さんが取り組んだのは、長年「アナログが当たり前」だった業務の改善です。
例えば、火葬場の予約業務。4月に戸籍住民課へ異動後、火葬場予約業務のアナログ手続き(電話、ファックス)が葬儀社に負担を与えていると知りました。
この課題を解決するべく、葬儀社がリアルタイムで空き状況を確認できるよう、予約のデジタル化に着手しました。
葬儀社が 電話での空き確認、FAXでの申込に加え、火葬許可証の受け取りに何度も市役所へ行く必要がありました。10年以上この運用だったため、庁内は不便さに「慣れ」てしまっている状態でした。
始まりは、三橋さんが業務フローに対して抱いた純粋な違和感でした。当初は「変える方が大変」という空気もあり難航しましたが、葬儀社から「手続きが大変」という切実な要望が上がったことで一転。「変えた方がいい」という流れに変わりました。
「年度途中に始めたため、予算をかけられない」という壁に対し、庁内にある既存システムを応用するアイデアで突破。追加コストをかけずにデジタル化を成し遂げ、利用者・職員双方にとってより良いサービスへアップデートしました。
葬儀社がカレンダー画面からリアルタイムの空き状況を見てその場で予約。申請もオンライン化され、市役所への来庁が不要になりました。
若手職員が仕掛ける、釧路市役所の業務改善~当たり前を変えていく面白さ~(インタビュー全文)
「放っておいても紙のまま仕事は回る。でも今のうちにやれば、未来の負担を減らせる」 (滑川市役所 中川さん・岩田さん)
滑川市の中川さんと岩田さんが取り組んだのは、高齢者や障害者が利用する「福祉利用券」(※)のデジタル化です。紙の券の配布や集計にかかる膨大な業務負担を解消するべく、部署の垣根を超えて全国初となる「LINE完結型」のシステム構築に挑戦しました。
※福祉利用券:障害者手帳をお持ちの方と70歳以上の高齢者の方が、市内の銭湯やコミュニティバス、タクシー、理美容店などで使える券
従来「福祉利用券」は、紙の名簿を確認して手渡しするアナログ運用でした。「お釣りが出ない枚数制」のため住民に損が生じる課題があり、さらに翌年度分の配布時期には、職員が1週間公民館に出向いてかかりきりになるなど、窓口業務に大きな負担がかかっていました。
「いつまでこのままでいくのか」という問題意識と、多忙な福祉課の業務を「自分たちのためにも変えたい」という切実な思いでした。数年で訪れる異動を見据え、属人的な仕事をなくして「次に引き継ぐ後輩の負担を減らしたい」という思いからプロジェクトが動き出しました。
配布時期に間に合わせるため、半年ちょっとというスピード感で進行。不公平感のないポイント制度への設計変更や予算要求に奔走しました。原課だけでなく、前職エンジニアの職員を擁するDX推進課と強力なタッグを組むことで、スピード実装を成し遂げました。
市の公式LINEから申請し、QRコードを読み取って使える「ポイント制」へ移行。1ポイント1円で無駄なく使えるようになり、住民だけでなく、紙の集計・換金の手間が消えた事業者からも大好評。職員の公民館配布もなくなり、窓口の拘束時間が大幅に削減されました。
【全国初のLINEでデジタルポイントを導入!】係の垣根を越えて挑む「福祉利用券」デジタル化。滑川市役所の若手職員が語る、業務改善と他部署連携(インタビュー全文)

「マイクロバスを運転してお宅を訪問し、一人ひとりに合わせた丁寧な対応を行ってます」(周防大島町 平田さん)
周防大島町の平田さんが取り組んだのは、人材不足を補う業務改善と住民向けのデジタル活用です。高齢化率が高い町だからこそ、「便利な機能を作って終わり」にせず、誰一人取り残さないための徹底的なデジタルデバイド(格差)対策に挑戦しました。
システム的な土台はあったものの、5,000人以上の健康診断データを職員が手打ちするなど、運用の現場はアナログなままでした。
DX推進担当になった平田さんが、「全体のDX推進計画」を策定したことが始まりです。そしてデジタルデバイド解消のため、各家庭訪問型の高齢者向けのスマホ教室を実施しました。
スマホ教室は公民館から移動型、さらに訪問型へと現場の反応を見ながら進化させました。平田さん自らマイクロバスを運転して町外のショップへ町民をレクチャーに連れて行くなど泥臭く行動。
訪問型スマホ教室は県の事業として10回程度の計画でしたが、自発的に50回以上に拡大し、知事が視察に訪れるほどの町の強みへと昇華させました。
また、RPAの導入で5,000人超のデータ入力を自動化。さらにLINEでの住民票申請なども可能にし、人口の約2割が友だち登録するほど好評を得ています。
DXを実現!住民と繋がり職員同士で連携する、周防大島町の仕事(インタビュー全文)
全員に共通しているのは、職員たちが「今のやり方、もっと良くできるはず」という自分の直感を信じて、一歩踏み出したことでした。
今の役所は、もはや「決められたルールをこなす場所」ではありません。
DXという新しい道具を使いこなし、まちを自分たちの手で、もっと優しく、もっと便利に塗り替えていく。そんなクリエイティブなフィールドが、今、自治体の現場に広がっています。
あなたの住む街の「当たり前」をアップデートするのは、次は、あなたかもしれません。




