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【行政事務職】民間から公務員へ。前職で磨いた力は、まちで活きる
【行政事務職】民間から公務員へ。前職で磨いた力は、まちで活きる
電子部品の研究開発、金融機関の営業、メーカーの財務、ホテル業界の接客。まったく別の場所で腕を磨いた3人が、自治体職員として働いています。
手戻りを防ぐ段取り、数字で判断する力と端的に伝える技術、現場に足を運ぶ姿勢。3人が入庁前に磨いたものは、いま、まちの現場で使われています。
自分のキャリアは公務でも通用するのか。その問いを持つ方にこそ読んでほしい、3人の現在地です。
※各記事の所属・年次はインタビュー当時のものです。

「全く違う業界で培った知識や考え方は、行政をアップデートするための大きな武器になる」(生駒市役所 志賀さん)
電子部品メーカーで研究開発を10年、カーナビのタッチパネル技術を応用した製品開発などを手がけた志賀さん。2024年に社会人採用で生駒市役所へ入庁し、都市づくり推進課拠点形成室に所属しています。
電子部品メーカーでの10年は、ゼロからモノを生み出す仕事でした。やりがいはありましたが、自分が設計した製品を使う人の反応を見る機会はほとんどありませんでした。
実家は飲食店で、お客さんの反応を間近で見て育った志賀さん。「もっと直接的なコミュニケーションを通じて誰かの喜ぶ顔が見える仕事がしたい」という思いを強め、社会人採用に力を入れる生駒市役所の門を叩きました。
主なミッションは、生駒駅南口(いこみな)エリアの活性化です。国土交通省の「まちなかウォーカブル推進事業」として、車中心から人中心のまちへ転換するプロジェクトを担っています。
製造業では1年後の量産を見据えたスピード感が求められますが、まちづくりは10年単位で考え、市民の意見を聞きながら進めます。
この時間軸の違いに、志賀さんは最初戸惑いました。
2024年度に発足した「庁内ワーキンググループ」は、前職の経験がベースになっています。
以前の職場では、設計の最終段階で製造現場から「この設計では効率が悪い」と差し戻される手戻りを防ぐため、上流の開発段階から下流の製造担当を巻き込む体制づくりを意識していました。
行政も同じです。まちづくりの部署だけで方針を決めても、道路を整備する段階になって土木や事業計画の部署から、技術的な制約でできないと言われてしまいます。そこで最初から関係部署を巻き込み、横断的に議論できる場をつくりました。
同じ2024年度に、空き事務所を使ったチャレンジショップ「サクラサク」を実施。6組が出店し、エリアで活動する市民が「サクラサク実行委員会」を立ち上げています。
関連記事:モノづくりから、マチづくりへ。10年のエンジニア経験を武器に挑む、生駒市の「居心地が良く歩きたくなる街」への挑戦(インタビュー全文)

「民間企業で培ったスキルは、公務員の仕事でも絶対に役立ちます」(佐倉市役所 伊藤さん)
金融機関で8年営業を担当し、その後メーカーで3年財務・総務に携わった伊藤さん。民間企業での11年を経て2016年度に佐倉市役所へ入庁し、収税課を経て財政課に所属しています。
金融機関とメーカーでの仕事は充実していましたが、転勤や出張が多く、ライフプランを考えたときに地域に根ざして働きたいと思うようになりました。
選んだのは、自分が育ったまち佐倉市。社会人経験枠の採用があり、迷うことなく決めています。
入庁後は収税課に5年間、滞納している税金の徴収を担当しました。
2021年から財政課で、市の予算と決算を扱っています。担当は教育部で、学校関連の予算について各課からの相談を受けながら調整します。
教育費の予算は担当する教育部だけで70億円近くあり、一つひとつの事業の内容を精査し、コストをかけずにできないかと査定していきます。国の補助金など使える財源を探すことも仕事のうちです。
金融機関での勤務経験は、予算編成や決算統計など数字に基づいた分析や判断が求められる場面で活きています。
メーカー時代に常に求められたのが、社内の経営層に対して必要な情報を端的にわかりやすく伝えることでした。その経験は、予算査定方針を部課長に説明する場面や資料をつくるときに使われています。
民間との違いを強く感じるのは意思決定にかかる時間で、市役所では利用者が少ない施設でもすぐに廃止とはならず、市民の声に耳を傾け、議会での説明や合意形成を図る慎重さが求められます。
直近では、不登校の子どもたちの居場所「ルームさくら」の3カ所目の拠点整備にあたり、場所や相談員の人数について関係部署と何度も話し合いを重ねました。
関連記事:国と民間の経験は、佐倉市でどう活きる?元国家公務員と元金融機関・メーカー社員が選んだ、新たな働き方(インタビュー全文)

「民間企業で培ってきた経験や、自分の中に一本芯として持っているものは、必ず役所の仕事でも活かせます」(直方市役所 甲斐さん)
大学卒業後、京都の会員制リゾートホテルでフロント業務を担当してきた甲斐さん。夜間責任者として1日の売上管理や客室調整まで担うなかで、もっと広い範囲で人の支えになりたいという思いを募らせ、直方市役所へ入庁しました。
いまは商工観光課商業観光係で、「中心市街地の活性化」というミッションに取り組んでいます。
会員制ホテルの仕事は、お客様に顔を覚えてもらい、リピートで指名をいただく楽しさがありました。ただ、関わるお客様の範囲はどうしても限られ、接することができるのもホテルにいる間だけです。
次第に「もっと広い範囲で、色々な人の支えになるような仕事がしたい」という思いが強まり、公務員を目指すようになりました。
人口5万人規模の自治体がいいという漠然としたイメージから、縁のあった直方市に決めています。
現在の業務は大きく二つ。複合施設内の子育て支援センターや民間店舗など、事業者間の調整役を担う施設管理と、商店街のにぎわいを日常的なものにする「エリアマネジメント事業」です。
空き店舗を埋める分かりやすい数値目標があるわけではなく、街にどういう機能を持った施設・お店があってほしいかという将来ビジョンを、住民や関係者と一緒につくり、実行に移していく難しさに向き合っています。
上司に相談して自ら特集記事の企画を提案し、A3見開きで実現させた経験も、この仕事のなかで生まれたものです。
ホテル時代、お客様に何かあればすぐ駆けつけられるよう常に伝え、他部署との連携でも電話で済むことをあえて直接顔を見て話すようにしていました。
その習慣は今も変わらず、用がなくても商店街を歩き、お店の方と話をしています。直接会って同じものを見ながら話すことで、問題意識を共有でき、相手にも安心してもらえると考えています。
関連記事:「現場に行って、直接顔を見て話す」ホテル業界から直方市役所へ。挑戦の先にあった、未来をつくる仕事(インタビュー全文)
